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水いぼは取るべきか、プールに入れるか。

水いぼは取るべきか、プールに入れるか。

◆ プール禁止の公式見解は無い
 毎年夏になると、「水イボのために保育園や幼稚園のプールに入れず困っている」との相談が寄せられます。
 水イボのためにプールを禁止する公式見解はありませんが(1-4)、水イボを放置したことによる感染拡大を懸念する一部の園ではプールを禁止している実態があります。このような場合でも、麻酔のシールを貼ってピンセットで取ればプールに入れてもらえ、当院でも痛くないようにシールを貼って取ることがあります。しかし、このような対策には以下の様な疑問も投げかけられてきました。
 
① 水イボを取ると治ることは経験されるが、取っても潜伏期のウイルスは残存するため期待される感染源の根絶効果は限定的である。取っても出てくることがあり、取って治るかどうかの予測はできない。
② 周囲の大人が見つけた水いぼ罹患児はその一部に過ぎず、感染経路は肌を接触する小児の集団生活にあるためプールのみを禁止しても感染拡大は阻止できない(5-6)。
③ 取れというのは恐怖を伴う(2)、残酷(7)。なぜなら、麻酔のシールを貼って痛くなくしても、子供達は取られるという恐怖に襲われますし、取って出た血を見ても怖がるからです。
 
◆ 多様な意見
 医師の考え方については、『数が少ないうちに取るのがよい』(8)とするものや、『取ることは否定しないが自然と治るので放置してよい』(9, 10)とするものがあります。また、プールは入って構わず(3)、少ないうちに取ったほうが良いとする医師もプールは入れると唱えています。さらには、『保護者の方が取ってきてほしい、一緒に入りたくないということでしたら、その親御さんの子どもが(プールに)入らなければいいのではないか』(7)との意見も聞かれます。確かに言われてみると、対策を講じたために水イボが減ったり無くなったとする話も、逆に対策を講じない施設で明らかに水イボが増えたという話も耳に入ってはきません。
 このように、水イボをめぐる医師と保護者、園からの意見はほぼ出し尽くされた感があります(7-14)。そこから導き出された結論は、園と保護者でよく話し合ってもらう(15)、子どもにストレスのかかるほどのプールの禁止は行き過ぎ(15)、統一見解はこれから形成される(16)とする以上に踏み込んだものはなくプールに入れずに夏を過ごす児と保護者にとっては歯がゆいものとなっています。インフルエンザによる学級閉鎖や学校保健法で定められた水ぼうそう等の出席停止と違い、水イボは当事者間で話し合って下さいというのが行政の立場のようです。思い起こすと、あるお父さんが『理不尽だが、子供を人質に取られているようなものなので、取らざるを得ない』とおっしゃっていましたが、こういう事案も様々な意味において、まあ、行き過ぎなのだろうと思います。

◆ 問題解決への道筋
 それでは、解決に向かってこれより先に進むには何をしたらよいのでしょうか。次に掲げる水イボの性格、
 
① 早期に取っても、特に範囲が広いと新しく出てくる傾向がある
② 自然治癒までの期間は多くの場合医療機関受診後、数週間から1年程度と一定しない。
③ イソジンを塗ると治ることがある。
 
は以前より知られていますし、園医がプールは禁止しないと明言しうまくいっている地域もあるようです(7)。中には、うつる病気と聞いて様々な誤解や不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんので、周囲の人全てが納得する解決策を診察室の中だけで打ち出すのはそもそも困難です(16)。ですから、解決の糸口をつかむには社会で話し合うこと(15)も大切ではないかと感じます。その時、考えて欲しいのです。水イボは、いつ、どこで、どうやって他からうつるのかということを。
 私は、小児科学会の『自然治癒傾向があり放置してよい。中略  ピンセットでの摘出や液体窒素での除去など、積極的に治療する考え方もある。』とする対応(9)が実状に合っていると考えており、保護者の方が希望されれば麻酔のテープを貼って取っています。しかし、取ることによる感染防止効果と、嫌がる子供の水いぼを取る保健上の意味はほとんど無いと思っています。そして、いずれ『以前はプールに入れないので水イボを病院でみて(取って)もらうよう言われたが、今は何も言われなくなった』という日が来ることを願いながら診察しているのです。
 冒頭で触れたように、我が子の水イボを取ったりプール禁止を疑問視する保護者の方が、医師の後ろ盾を得て園との交渉に持ち込みたい、との思惑をもって医療機関を訪れることは稀ではありません。そんな、水イボに困り果てた方が、医師からの『水イボがあっても、お子さんはプールに入れます。水イボでプールを禁止される言われは(学校保健安全法が定めるインフルエンザの出席停止と異なり)ありません』 という一言をもらいたいことは容易に想像がつきます。しかし、水イボ問題には、感染以外の上述のような要因も絡んでいるため、保護者と園との話し合いで解決いただく性格のものとされているのです。園が水いぼに、それも肌を露出する季節だけ、あれ程までにこだわらざるをえないのは、実は表だっては言えない、園だけに押し付けられても対処しきれない隠された事情があるやも知れないことに、保護者も気づいてほしい、分かってほしいというサインの表れなのかも知れないとは思いませんか。そうとでも疑わせるくらい、水イボを巡る出来事は、医師には不自然に奇怪にすら映るのです。
 繰り返しますが、水イボをお子さんに辛い思いをさせて取っても、他の子へうつさなくする効果は殆どありません。また、数が多いなど目立つ水イボは、他人へうつさぬよう取らなければならないとする科学的根拠もありません。水イボは、どこの保育園や幼稚園にでも探せばおそらく一年中みられ、肌を触れ合う幼児が集団生活を送るなかで知らない間にうつし合っているのです。うつされたくなかったら、集団生活を送らぬ以外に有効な方法はなく、たまたま目についた水イボに目くじらを立てる意味などないのです。これが、『治りにくいことがあってもそんなに心配することは無い』、『我が子にうつらぬよう取ってきてほしい、一緒にプールに入りたくないと言うのなら、その親御さんのお子さんがプールに入らなければ済む話ではないか』とする園医の考え(7)の論拠です。『園医が指摘するような偏見が、水イボ騒動に潜む原因である』とささやく達観した保護者の方にお目にかかることがありますので(17、18)、この園医の考えは正論と私は捉えています。

Blog:『水イボをプール/水遊びの前にみてもらってください』と言われました。


 参考文献・出典
 4.Molluscum Contagiosum: Centers for Disease Control and Prevention
 5.福井県鯖江市医師会(要原典) 2016年8月アクセス
 6.新潟県小児科医会 2016年8月アクセス
 7.財団法人母子健康協会 2016年8月アクセス
 8.みずいぼ 日本小児皮膚科学会 2016年12月アクセス
 9.学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説、P22:日本小児科学会 2016年12月アクセス
10.北九州地区小児科医会 2017年4月アクセス
11.地域における幼稚園、保育園の伝染性軟属腫への対応と地区医師会の取り組みについて:日本臨床皮膚科医会雑誌:31(3)、401-408、2014.
12.
水いぼが止まらない:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
13.子供の水いぼ、プールについて:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
14.水いぼ、どうしたらいい?:朝日新聞デジタル apital、2016年12月アクセス
15.厚生省保育課(要原典)
16.委員会報告「学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解に関する解説」に関する質問に対する回答:日本皮膚科学会雑誌:125(10)、1919、2015.
17.偏見があることを知っておこう、2017年5月アクセス
18.水いぼ、2017年5月アクセス


 

 
 

2017-05-05 09:13:48

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