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水いぼはプールNGだった昭和

水いぼはプールNGだった昭和

◆ はじめに
 昭和は、小さい子の水いぼは取らないとプールに入れてもらえない時代でした。しかし、その後『水いぼはタオルなどを共有しなければプールに入れ、ジクジクしたりかゆみが無ければ放置し、自然と治るの待てばよい』との学会の考えが行き渡り、普段通り過ごせるようになり長らく経ちます。プールに入れない覆った方が良いなどの特段の対策は今となってみれば始めから必要なく、昭和の親御さんを惑わした水いぼ対策は、時代の移ろいとともに朽ち果てもはや過去の遺残となりました。ある園医が『治りにくいことがあってもそんなに心配することは無い。ラッシュガードの徹底までしなくてもよろしいのではないか』と言っているように、水いぼは感染してはいけない特別な病気ではありません。ましてや、お子様の水いぼがお友達にうつしうつされ迷惑をかけ合うなどという考えは、地震で動物園からライオンが逃げたというfake newsのような決して同調してはならない誤解に過ぎません。そのような誤解は、医学や公衆衛生学が進歩し、洗練された道徳と高い倫理感が社会に行き渡った今日にあろうはずなどないのです。上述の園医が示唆するように、時代は、水いぼがある子も無い子と同じように、とりたてて問題にすることなく接するようになりました。

◆ プール禁止の公式見解は無い
 毎年夏になると、「水いぼを指摘されたが、対処する必要があるか」との相談が寄せられます。
 水いぼのためにプールを禁止する公式見解はなく(1-4, 9)、小児科学会は『自然治癒傾向があり放置してよい』と明言しています(9)。プールに入る時の一定のルールは無く、多数ある場合はタオルや浮輪を共有しない(9)、水いぼを衣類、包帯、耐水性ばんそ うこう等で覆う(2)との記載も見受けられます。放置して良いのですが、麻酔のシールを貼ってピンセットで取る方法もあります。当院でも取ることはありますが、ピンセットで取っても確実に治るとは限らず、以下の様な限界や疑問も投げかけられてきました。
 
① 水いぼを取ると治ることは経験されるが、取っても潜伏期のウイルスは残存するため期待される感染源の根絶効果は限定的である。取っても出てくることがあり、取って治るかどうかの予測はできない。
② 周囲の大人が見つけた水いぼ罹患児はその一部に過ぎず、感染経路は肌を接触する小児の集団生活にあるためプールのみを禁止しても感染拡大は阻止できない(5-6)。
③ 取れというのは恐怖を伴う(2)、残酷(7)。なぜなら、麻酔のシールを貼って痛くなくしても、子供達は取られるという恐怖に襲われますし、取って出た血を見ても怖がるからです。
 
◆ 多様な意見
 『自然治癒傾向があり放置してよい』(9, 10)と小児科学会が明言する一方で、『数が少ないうちに取るのがよい』(8)と考える医師もいます。また、プールは入って構わず(3)、少ないうちに取ったほうが良いとする医師もプールは入れると唱えています。さらには、『保護者の方が取ってきてほしい、一緒に入りたくないということでしたら、その親御さんの子どもが(プールに)入らなければいいのではないか』(7)との意見も聞かれます。確かに言われてみると、対策を講じたために水いぼが減ったり無くなったとする医学専門家の話も、逆に対策を講じない施設で明らかに水いぼが増えたという話も耳に入ってはきません。
 このように、水いぼをめぐる医師と保護者、園からの意見はほぼ出し尽くされた感があります(7-14)。そこから導き出された結論は、子どもにストレスのかかるほどのプールの禁止は行き過ぎ(15)、統一見解はこれから形成される(16)とする以上に踏み込んだものはなく、水いぼは当事者間で話し合って下さいというのが行政の立場のようです(15)。

◆ 水いぼにどのように向き合うか
 感染症ではあるが自然に治り、ウイルスがうつってから症状となって気がつくまで何週間も何か月もかかり、見つけた発疹が感染源の大半を占めるとも考えられず、感染経路を絶つ有効な方法もない水いぼに、私達はどのように向き合ったら良いのでしょうか。水いぼの次に揚げるような性格、
 
① 早期に取っても、特に範囲が広いと新しく出てくる傾向がある
② 自然治癒までの期間は多くの場合医療機関受診後、数週間から1年程度と一定しない。
③ イソジンを塗ると治ることがある。
 
は以前より知られていますし、園医がプールは禁止しないと明言しうまくいっている地域もあるようです(7)。中には、うつる病気と聞いて様々な誤解や不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんので、周囲の人全てが納得する解決策を診察室の中だけで打ち出すのはそもそも困難です(16)。ですから、解決の糸口をつかむには社会で話し合うこと(15)も大切ではないかと感じます。私は、小児科学会の『自然治癒傾向があり放置してよい。中略  ピンセットでの摘出や液体窒素での除去など、積極的に治療する考え方もある。』とする対応(9)が実状に合っていると考えています。
 水いぼは、幼児が送る集団生活の場で探せばおそらく一年中みられ、肌を触れ合うなかで知らない間にうつし合っているのです。インフルエンザの感染対策とは異なり、夏にだけ、目についた水イボに負担のかかる対策を講じるメリットは殆どないと思います。うつされたくなかったら、集団生活を送らぬ以外に有効な方法はなく、これが、『治りにくいことがあってもそんなに心配することは無い』、『我が子にうつらぬよう取ってきてほしい、一緒にプールに入りたくないと言うのなら、(水イボのあるお子さんを問題にするのではなく)その親御さんのお子さんがプールに入らなければ済む話ではないか』とする園医の考え(7)の論拠です。『ラッシュガードを徹底する保育園もあるがそこまでやらなくてもよろしいのではないか、ビート板を介してうつる可能性はあるかもしれないが一般的に少ないと思う』とのこの園医の指摘通り、耐水性ばんそうこう等で覆うなどの効果は根拠が希薄では疑問視されています。
 子供がかっても特別視しない感染症はあります。手足口病がそれで、厚生労働省は感染してはいけない特別な病気ではない(17)と言っています。水いぼも、感染してはいけない特別な病気ではありません。

Blog:『水イボをプール/水遊びの前にみてもらってください』と言われました。


 参考文献・出典
 4.Molluscum Contagiosum: Centers for Disease Control and Prevention
 5.福井県鯖江市医師会(要原典) 2016年8月アクセス
 6.新潟県小児科医会 2016年8月アクセス
 7.財団法人母子健康協会 2016年8月アクセス
 8.みずいぼ 日本小児皮膚科学会 2016年12月アクセス
 9.学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説 2018年改訂版、P38:日本小児科学会 2018年10月アクセス
10.北九州地区小児科医会 2017年4月アクセス
11.地域における幼稚園、保育園の伝染性軟属腫への対応と地区医師会の取り組みについて:日本臨床皮膚科医会雑誌:31(3)、401-408、2014.
12.
水いぼが止まらない:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
13.子供の水いぼ、プールについて:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
14.水いぼ、どうしたらいい?:朝日新聞デジタル apital、2016年12月アクセス
15.厚生省保育課(要原典)
16.委員会報告「学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解に関する解説」に関する質問に対する回答:日本皮膚科学会雑誌:125(10)、1919、2015.
17.
手足口病に関するQ&A:厚生労働省、2018年9月アクセス


 

 
 

2019-01-30 07:58:02

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