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水いぼはプールNGだった昭和

水いぼはプールNGだった昭和

◆ あらまし
 昭和は、小さい子の水いぼは取らないとプールに入れてもらえない時代でした。しかし、その後『自然治癒傾向があり放置してよい』との小児科学会の考え(1)が行き渡り、タオルなどを共有しなければプールに入れ、ジクジクしたりかゆみが無ければ放置し、普段通り過ごせるようになり長らく経ちます。昭和の親御さんを惑わした水いぼ対策は、時代の移ろいとともに朽ち果てもはや過去の遺残となりました。ある園医が『治りにくいことがあってもそんなに心配することは無い。ラッシュガードの徹底までしなくてもよろしいのではないか。ビート板を介してうつる可能性はあるかもしれないが一般的に少ないと思う』と言っているように(2)、水いぼは感染してはいけない特別な病気ではありません。ましてや、お子様の水いぼがお友達にうつしうつされ迷惑をかけ合うなどという考えは、地震で動物園からライオンが逃げたというフェイクと同様決してシェアしてはいけない誤解に過ぎません。上述の園医が示唆するように、時代は、水いぼがある子も無い子と同じように、とりたてて問題にすることなく接するようになりました。
 水いぼは、肌を触れ合う集団生活を送る幼児には、一年を通じてみられます。夏にだけ、目についた水イボに負担のかかる対策を講じる意味などないのです。うつされたくなかったら、集団生活を送らぬ以外に有効な方法はなく、これが、『我が子にうつらぬよう取ってきてほしい、一緒にプールに入りたくないと言うのなら、(水イボのあるお子さんを問題にするのではなく)そうと言う親御さんのお子さんがプールに入らなければ済む話ではないか』とする、厚労省の感染症対策ガイドライン見直し検討委員も歴任した上述の園医(2)の論拠です。別の小児科医からは、『医学的に根拠のないプール禁止は人権侵害・差別とも考えられることを、学校・幼稚園・保育園・スイミングスクールの責任者には理解いただきたい』(3)とする意見も聞かれます。お二人とも、自然治癒するまでの放置が推奨されている水いぼの存在を、わざわざ診察室以外の場で指摘しても保護者を困惑させるだけで、メリットがあるとは思えないのでそっとしておくよう啓蒙しているのです。
 良かれと思い耐水性ばんそうこう等で覆ったり、見えている部分だけ水いぼを取るなどの対策を施すと、『自然治癒傾向があり放置してよい』との小児科学会の見解はないがしろにされ、感染対策を施さなければいけない病気との誤ったメッセージとして受けとめられ、それが尾ひれをつけながらあらぬ方向に一人歩きするのが問題です。例えば、 『医師からイボの除去は適切ではないと診断されたにも関わらず、園からは激しい痛みを伴う除去を求められ、除去しないと他の保護者からいわれのない非難を浴びることがあります』という自治体が公開する市民からの投稿は(4)、問題の根深さを物語っています。差別や偏見がないようにとの配慮*にもかかわらず。
*感染症にかかっている又はその疑いやおそれのある児童生徒、教職員等が差別・偏見の対象となることがないよう十分な配慮をすることも必要です(5)、児童生徒等に対する出席停止の措置等によって差別や偏見が生じることのないように十分に配慮する必要があります(6)

◆ プール禁止の公式見解は無い
 毎年夏になると、「水いぼを指摘されたが、対処する必要があるか」との相談が寄せられます。
 水いぼのためにプールを禁止する公式見解はなく(1、5-7)、小児科学会は『自然治癒傾向があり放置してよい』と明言しています(1)。プールに入る時の一定のルールは無く、多数ある場合はタオルや浮輪を共有しない(1)、水いぼを衣類、包帯、耐水性ばんそ うこう等で覆う(6)との記載も見受けられます。放置して良いのですが、麻酔のシールを貼ってピンセットで取る方法もあります。当院でも事情を抱えた保護者の方に請われて致し方なく取ることはありますが、ピンセットで取っても確実に治るとは限らず、以下の様な限界や疑問も投げかけられてきました。
 
① 水いぼを取ると治ることは経験されるが、取っても潜伏期のウイルスは残存するため期待される感染源の根絶効果は限定的である。取っても出てくることは多く、取って治るかどうかの予測はできない。
② 周囲の大人が見つけた水いぼ罹患児はその一部に過ぎず、感染経路は肌を接触する小児の集団生活にあるためプールのみを禁止しても感染拡大は阻止できない(9、10)。
③ 取れというのは残酷(1)。なぜなら、麻酔のシールを貼って痛くなくしても、子供達は取られるという恐怖に襲われますし、取って出た血を見ても怖がるからです。また、取った跡が、へこんだ跡として残ってしまうこともあります。あるお母さんは、『自分自身、子どもの時に水いぼを取られたことが、トラウマとして残っている』と話してくださいました。『(水いぼをとらないとプールは入れないとは)理不尽だが、人質に取られているようなものなので従うほかない』と嘆いて、わが子の水いぼを取りに来たお父さんもいました。
 
◆ 多様な意見
 『自然治癒傾向があり放置してよい』(1)と小児科学会が明言する一方で、『数が少ないうちに取るのがよい』(9)と考える医師もいます。また、プールは入って構わず(7)、少ないうちに取ったほうが良いとする医師もプールは入れると唱えています。さらには、『保護者の方が取ってきてほしい、一緒に入りたくないということでしたら、その親御さんの子どもが(プールに)入らなければ済む話ではないか』(2)との意見も聞かれます。確かに言われてみると、対策を講じたために水いぼが減ったり無くなったとする医学専門家の話も、逆に対策を講じない施設で明らかに水いぼが増えたという話も耳に入ってはきません。
 このように、水いぼをめぐる医師と保護者、園からの意見はほぼ出し尽くされた感があります(1、2、9、11-14)。そこから導き出された結論は、子どもにストレスのかかるほどのプールの禁止は行き過ぎ(15)、統一見解はこれから形成される(16)とする以上に踏み込んだものはなく、水いぼは保護者と園が話し合って下さいというのが行政の立場のようです(4、15)。『水いぼのためプールに入れてもらえない』、『水いぼを指摘され困っている』という保護者の方は少なくありませんが、医療機関は個別のケースごとに保護者の方の後ろ盾になり、プールにいれてもらえるよう、あるいは自然に治るまでそっとしてもらえるよう園との交渉を残念ながらしていません。

◆ 水いぼにどのように向き合うか
 感染症ではあるが自然に治り、ウイルスがうつってから症状となって気がつくまで何週間も何か月もかかり、見つけた発疹が感染源の大半を占めるとも考えられず、感染経路を絶つ有効な方法もない水いぼに、私達はどのように向き合ったら良いのでしょうか。水いぼの次に揚げるような性格、
① 早期に取っても、特に範囲が広いと新しく出てくる傾向がある
② 自然治癒までの期間は多くの場合医療機関受診後、数週間から1年程度と一定しない。
③ イソジンを塗ると治ることがある。 
は以前より知られていますし、園医がプールは禁止しないと明言しうまくいっている地域もあるようです(7)。中には、うつる病気と聞いて様々な誤解や不安を抱く方もいらっしゃるかもしれませんので、周囲の人全てが納得する解決策を診察室の中だけで打ち出すのはそもそも困難です(17)。ですから、解決の糸口をつかむには社会で話し合うこと(15、18)も大切ではないかと感じます。

◆ 水いぼも、感染してはいけない病気ではないと考えられるのではないでしょうか
 水いぼは、ウイルスが原因の感染症で治療法と予防法は確立されていません。しかし、自然と治り、感染してもインフルエンザのような激しい症状は出ません。このような、 乳幼児の集団生活施設において現実的な感染対策が無く、軽い症状だけで治ってしまう多くの人がかかる感染症に手足口病があります。手足口病について、厚労省は「感染してはいけない特別な病気ではない」とホームページに公開しています(18)。水いぼも、感染してはいけない病気ではないと捉えられるのではないでしょうか。


Blog:『水イボを、みてもらってください』と言われました。


 参考文献・出典
 8.Molluscum Contagiosum: Centers for Disease Control and Prevention

 9.みずいぼ 日本小児皮膚科学会 2016年12月アクセス
10.新潟県小児科医会 2016年8月アクセス
11.地域における幼稚園、保育園の伝染性軟属腫への対応と地区医師会の取り組みについて:日本臨床皮膚科医会雑誌:31(3)、401-408、2014.
12.
水いぼが止まらない:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
13.子供の水いぼ、プールについて:YOMIURI ONLINE、発言小町、2016年12月アクセス
14.水いぼ、どうしたらいい?:朝日新聞デジタル apital、2016年12月アクセス
15.厚生省保育課(要原典)
16.委員会報告「学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解に関する解説」に関する質問に対する回答:日本皮膚科学会雑誌:125(10)、1919、2015.
17.
水いぼ摘除の前に考えるべきこと 日本小児科医会乳幼児学校保健委員会委員長に聞く 2019年7月アクセス
18.手足口病に関するQ&A:厚生労働省、2020年7月アクセス


 

 
 

2020-06-14 19:13:00

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