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『水イボを、みてもらってきてください』と言われました

『水イボを、みてもらってきてください』と言われました

小児科学会は”自然に治るので放置してよい”
 『(水いぼが)うつるものかどうか、水遊びができるよう、みてもらってきてください』とほのめかされたが、どうしたらよいかと相談を受けることがあります。水いぼはウイルスが原因で、幼児が集団で生活すると知らずにうつし合っている、あっても何か月も気づかないこともある、誰でもかかりうるごくありふれた症状です。原因ウイルスに効く薬は無く、『自然治癒傾向があり放置してよい』と小児科学会が言うように、一時的に数が増えても自然と治るのを数か月から1年前後かけて待ちます。

皮膚科学会は”プールOK”
 水いぼがあっても、プールは入れるとする公式見解があります。しかし、実際の対応は施設によって異なり、何も言われないところから、取らないと水遊びができなかったり、プールに入れてもらえないところまであります。様々な相談を受けますが、ある園医が『治りにくいことがあってもそんなに心配することは無い』と言っているように、水いぼは感染してはいけない特別な病気ではありません。ましてや、お子様の水いぼがお友達にうつしうつされ迷惑をかけ合うなどという考えは、地震で動物園からライオンが逃げたというフェイクと同様決してシェアしてはいけない誤解に過ぎません。上述の園医が示唆するように、水いぼがある子も無い子と同じように、とりたてて問題にすることなく接する時代になりました。

それでもなる、納得できない雰囲気
 事の始まりは、園で、『水いぼがあると困る』と感じるニュアンスのこと(もう限界です、今年はプールは無理だね)を言われます。そこで病院に行くと医師は、『放置してよい』と何の役にも立たないこと言うので困り果てるというわけです。これを解決するには防水テープを貼ればよいのか、ラッシュガードを着ればよいのか、取らないと駄目なのか、おかしいとは思いますが親が園に忖度する以外ありません。
 このようなおかしなことが起こる背景には、あってはならぬことですが、我が子に水いぼがうつらぬよう厳格な感染対策が必要との根拠のない誤解があります。そのため園としては、保護者から苦情が来ないよう対策を講ぜざるを得ないのではないかと思われます。

医師と行政が手をこまねく問題のありか
 このような事態の収拾を図ろうと、厚労省の感染症対策ガイドライン見直し検討委員も歴任した上述の園医は、『保護者の方が水いぼは取ってきてほしい、一緒にプールに入りたくないということなら、その親御さんの子どもが(プールに)入らなければ済む話ではないか。ラッシュガードを徹底する保育園もあるが、そこまでやらなくてもよろしいのではないか。ビート板を介してうつる可能性はあるかもしれないが、一般的に少ないと思う』と発言しています。別の小児科医からは、『医学的に根拠のないプール禁止は人権侵害・差別とも考えられることを、学校・幼稚園・保育園・スイミングスクールの責任者には理解いただきたい』とする意見も聞かれます。お二人とも、自然治癒するまでの放置が推奨されている水いぼの存在を、わざわざ診察室以外の場で指摘しても保護者を困惑させるだけで、メリットがあるとは思えないのでそっとしておくよう啓蒙しているのです。
 良かれと思い、耐水性ばんそうこう等で覆ったり、見えている部分だけ水いぼを取るなどの対策を施すと、『自然治癒傾向があり放置してよい』との小児科学会の見解はないがしろにされ、症状のある人に感染対策を施さなければいけない病気との誤ったメッセージとして受けとめられ、それが尾ひれをつけながらあらぬ方向に一人歩きするのが問題です。例えば、 『医師からイボの除去は適切ではないと診断されたにも関わらず、園からは激しい痛みを伴う除去を求められています。医師の診断に従い除去しなかった子どもたちやその家族は、他の保護者たちからいわれのない非難を浴びることがあります』という自治体が公開する市民からの投稿は、問題の根深さを物語っています。差別や偏見がないようにとの配慮*にもかかわらず。
*児童生徒等に対する出席停止の措置等によって差別や偏見が生じることのないように十分に配慮する必要があります(厚生労働省:保育所における感染症対策ガイドライン、2018)、感染症にかかっている又はその疑いやおそれのある児童生徒、教職員等が差別・偏見の対象となることがないよう十分な配慮をすることも必要です(公益財団法人 日本学校保健会:学校において予防すべき感染症の解説、2018

プールNGだった時代が今に伝える教訓
 水いぼは取らないと水遊びをさせてもらえなかった時代がありました。今でも、事情により保護者が取ると決めた場合は、麻酔のテープを貼って当院では仕方なく取っています(取っても目に見えないウイルスがいて、しばらくするとまた出てくることがほとんどです。お顔はお願いされても取っていません。大きいから、何か月も消えないから健康のため取った方が良いということもありません)。ただし、当時も、『肌から血が出る様な可哀想なことはさせたくない』とする親御さんは多かったように思えます。最近は減りましたが、どこの病院に行っても治らず、水遊びをさせてもらえずひと夏を過ごす子供を抱えて、何とかならないかと夫婦であるいは祖母と一緒に来院されるご家族を、私を含め多くの医師は毎年夏になると診察してきました。言われなく疎外され、医者をはじめ回りの誰も手を差し伸べず、さぞかし寂しい思いをさせたはずです。そのつもりが無くても、結果的に水いぼのある方に無用な負担を強いるのは、もう終わりにしたいものです。

正論は沈黙し、不安が曲論に拍車をかける
 いつまでも決め手に欠く方法の不毛な議論が、それも人目にさらされる夏の間に限って繰り返されるのは、うつることに対する根拠のない不安と誤解に振り回されているだけなことに、そろそろ社会は気づくべきです。水いぼを覆ったりプール禁止にしても効果は無く、毎年新たに水いぼになる子がいたことは医師も保育者も良く知っています。取ると減って気が楽になりますが、多くの場合しばらくすると別のところに新しく出てきます。ハトムギで治ったとおっしゃるお母さんが見せてくださったことがありますが、気づかないだけで他の場所に新たにできており治っていませんでした(ハトムギは水いぼに保険適応がなく、当院は処方していません)。水イボへの有効性が科学的に証明された方法はなく、お勧めできる確実な方法は初めからなく、幼児が集団生活を送れば感染は避けられないのです。
 『水いぼのためプールに入れてもらえない』、『水いぼを指摘され困っている』という保護者の方は少なくありませんが、医療機関は個別のケースごとに保護者の方の後ろ盾になり、プールにいれてもらえるよう、あるいは自然に治るまでそっとしてもらえるよう園との交渉を残念ながらしていません。
 

2020-06-14 19:12:41

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