京急蒲田駅直結の皮膚科、たけうち皮フ科クリニック

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アトピー性皮膚炎

◆ アトピーとは
 出された薬を塗った時は治るが、しばらくすると同じ場所に皮膚炎を繰り返し、激しいかゆみに襲われることもあります。このような薬塗りとかゆみは、本人のみならず家族にとっても日常の重荷となり、その経済損失は1カ月約4,690億円(アトピーを含むアレルギー性皮膚疾患)と試算されています。
 治療の基本はステロイドとタクロリムス、デルゴシチニブの塗り分けにありアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021, P2713:日本皮膚科学会、日本アレルギー学会)、重症例を除くほとんどのアトピー性皮膚炎は塗り薬の適切な使用法を理解していれば、自分でコントロールできるようになります厚生労働科学研究。つまり、ステロイド軟膏で良くしたあと、それだけでは良くならない繰り返しやかゆみを、タクロリムス(プロトピック®)軟膏あるいはデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏を長期に塗り続け改善させます。治療が長引いたり、塗っているのに症状の勢いが止まらない原因の大半は、ステロイド外用薬やタクロリムス(プロトピック®)軟膏の不十分な使用量にあります(厚生労働科学研究)
 このように、アトピー性皮膚炎の治療は、標準治療として世界的に確立されています。しかし、標準治療に使う薬を処方されても適切に長期に塗る負担は大きく、入院して朝晩看護婦さんに塗ってもらうと良くなるのに、退院すると同じ薬があっても悪化することが経験されます。だからといって、標準治療に代わる現実的な治療法は今のところなく、厚労省研究班の専門家が解説するこちらのサイトのご一読もお勧めします。
 繰り返す病気ですので、4~5か月調子がよくても悪くなった時の薬を絶やさないようにして下さい(悪くなくても、アトピーの薬は処方できます)。時々かゆくなるうちは、タクロリムス(プロトピック®)軟膏あるいはデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏を、かゆくない日も毎日塗ります。そして、全くかゆくなったら塗る頻度を1日おき週2回と減らし、塗らない日は保湿剤を塗ります。半年間保湿剤だけで全くかゆくなくなったら、やめてみます。
 病院に通っている人は、推計45万6,000人。良くなるが治りにくい、治りにくいが治る病気です。

アトピー性皮膚炎を正しく理解しよう(動画) 九州大学皮膚科教授

・ステロイドを塗っても、色素沈着は起こしません。強い薬なので、薄く塗ったほうが良いということもありません。
・ステロイドやタクロリムス(プロトピック)は、日に当たっていけない薬ではありません。朝も塗れます。
・ネットに書いてあったり、信頼する回りの人がそうだと話しても、そのようなことはありません。塗っていけない薬を、国は医療用に認めません。

ステロイドやタクロリムスを塗っても良くならず、副作用も心配です。良くなっても薬を塗る必要があるのは何故ですか。東京都保健医療局​


 
 目 次 
原因
アトピーは治りますか
治療の基本はステロイドとタクロリムス(プロトピック®)/デルゴシ チニブ(コレクチム®)の塗り分け
見ただけでは分からないかゆみ
激しい発疹に効くシクロスポリン
◆ 注射 デュピルマブ(デュピクセント)・ネモリズマブ(ミチーガ)
薬を塗るのは大変 患者と医師の隔たり
人それぞれ異なる治療への取り組み方|患者会のご紹介
 子供のアトピー(乳幼児から小学生小学校高学年から中高校生)
Q 血液検査で反応すると出た、卵やハウスダストが原因ですか。血液検査(IgE、TARC)は受けるべきですか。
Q 薬はいつまで塗るのですか。
Q 季節の変わり目に悪くなります。東京に大学、就職、転勤で転居したら悪化しました。
Q 薬は何回、いつ塗ったら良いですか。
Q べとべとした塗り薬が合いません。
Q 「夜中に眠りながらかいている」と家族に言われます。朝起きると爪の間に血が付いて、パジャマが血で汚れています。夜かゆがって泣く子供に起こされます。かゆみ過敏とは何ですか。かゆみ止めの飲み薬は効きますか。
Q 保湿を続けているのに、カサカサやかゆみが治りません。
Q 汗をかくと悪化します。
Q 夏でも保湿剤は塗った方が良いですか。
Q 石鹸は使った方がいいですか。どのような石鹸を選んだら良いですか。
Q 入浴剤を使いたいのですが、どのような商品を選んだらよいですか。
Q ステロイドで良くしても、また元に戻ります。
Q 薬は混ぜて容器に入ったのと、チューブとどちらがよいですか。
Q ステロイドは何日塗れますか。
Q 目の回りは、眼科用の薬ですか。まぶたの乾燥、赤み、くすみ、かゆみ、しわ、腫れ。
Q 唇の乾燥にリップを使っています。唇にホクロがあります。
Q 乳首のジクジクが治らず、切れて痛みます。
Q 首回りや肘の、色素沈着が消えません。
Q タクロリムスを塗ったら、熱くヒリヒリしてかゆみも増して使えませんでした。子供がかゆがって夜中に泣き、親も起こされ眠れませんでした。
Q ステロイドを塗ると、茶色いシミが残り消えなくなりますか。日に当たってはいけない薬ですか。
Q エステ、美容皮膚科で「施術を受けてよいか、アトピーがあるのでシミにならないか」、皮膚科に行って聞いてくるよう言われました。
 
◆ 原因
 アトピーの皮膚は、一見正常に見えても全身が敏感肌です。その原因は、皮膚の表面の保湿成分が少ないドライスキンにあります。敏感肌のため、夏のかいたままの汗や冬の乾燥などで、かゆい皮膚炎(湿疹)をしばしば繰り返します。女性では、生理の時にかゆくなる方がいらっしゃいます。体以外の原因としては、気候やその時代の社会の衛生状態、さらには日常のストレスなど、いくつもの要素が様々に組み合わさってアトピーは発症すると考えられています。
 実際、居心地の良い温暖な住み慣れた故郷を離れ、夏は熱帯夜、冬は異常乾燥注意報がでる東京で仕事に追われ、家族や友人のいない部屋に寝に帰る暮らしを一人で送ると、アトピーが悪化することはしばしば経験されます。同様に、東南アジア出身の方が東京勤務となり、母国では子供の頃からなかったアトピーの症状に悩まされることもあります。逆に、長年のアトピーが転居や海外勤務に伴い治ってしまうこともあります。過去に、小児のアトピーが、ドルフィン療法と称して沖縄でイルカと遊んで過ごすと良くなった理由は、お子さんがお母さんとリラックスして、医師の指導のもとスキンケアが十分にでき、紫外線の穏やかな炎症を抑える作用によると考えられます。(注:アトピーを日光浴で良くすることは、医学的に勧められていません。)
 昭和40年頃まではアトピーが少なかった理由は、炎症性細胞がばい菌と戦うことに忙しく、アトピーになる余裕が無かったからと考えられています。アトピーは世界中にみられますが、日本の都市部では見かけなくなった土間のある家に住んでいる人々にアトピーはないそうです。

◆ アトピーは治りますか
 アトピーは喘息や花粉症(アレルギー性鼻炎)と似た病気で、治りにくいが治る病気です。個人的には花粉症よりは治りやすいと思います。ちゃんと薬を塗って良くしても、数か月すると悪化することはよくあり、年単位の治療が必要です。

 治癒への近道は、、皮膚炎が悪化しないように有効な塗り薬や内服薬で皮膚の状態を早めによくすることにあると厚生労働省研究班は強調しています。皮膚炎に有効な塗り薬とは、ステロイド外用薬とタクロリムス(プロトピック®)とデルゴシ チニブ(コレクチム®)です(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021、P2712)。
 年齢とともにアトピーの人の数は減ることが患者アンケートでも医師による検診でも明らかにされており、アトピーは年齢とともに自然と治っていきます。実際、子供の頃のひどいアトピーが、大人になって治ったという人を診察することがあります。それなのに、治るとはっきり答えない医師が私を含め殆どですし、公開講座で質問しても治るとも治らないとも答えません。このような違いは、世間一般でいう治るという意味と、医学でいう治癒のそれとが異なることからきています。
 アトピーはアトピー素因と呼ばれる体質に、気候やストレスなどの環境因子が複雑に絡み合ってなります。アトピー素因は、アトピーがなくても人口の何割かは知らずに持っているでしょうし、アトピーが治った後にもやはり残っています。このように潜在するアトピー素因を特定し無くすこと、つまり治癒できないことが医師にとっては問題なのです。そのため、医学を市民に責任もって説明する立場にある医学専門家は、治る病気と公の場で安易に口にできないのです。
 治った人が、どうしたから治ったのか一定しないのもアトピーの特徴です。このため、一人一人にあなたの場合はこのようにすれば何才頃に治りますとお話しできません。治る方法とその時期について納得いただけるまで短い診察時間の中で説明しきれないことも、医師が治るかどうか明言を避けたがる理由です。

治療の基本はステロイドとタクロリムス(プロトピック®)/デルゴシ チニブ(コレクチム®)の塗り分け
 治療の基本はステロイド外用薬と、タクロリムス(プロトピック®)軟膏あるいはデルゴシ チニブ(コレクチム®)軟膏をいかに選択し組み合わせるかにありますアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021、P2713)。ザラザラした発疹は、適切な強さのステロイド軟膏で、撫でてカサカサがなくなりつるっとなるまで良くしきります。かゆみが落ち着くなどある程度良くなったところで、ステロイドを止めないのがポイントです。完全によくなったら、何もないところにタクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏にかえます。塗るところは、過去に繰り返したところ、たまに掻くところ、あるいはくすんだところで、いずれも自覚されない病気が潜在しています。治ったように見えても、湯沸かし器の種火のように病気が残っていてぶり返しますので、症状が無くてもタクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏でさらに良くします。喘息の薬を、咳をしなくても飲むのと同じです。もういいかなと思っても塗り止めず、1日おき、週に2回と塗る頻度を減らし、塗らない日は保湿剤を塗ります。時々かゆくなったり、くすみがあるうちは毎日塗った方が治療ははかどります。
 かゆい時だけ塗っていても、なかなか良くならない病気です。タクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏で良くなった状態がある程度維持されると、半年、1年という単位でアトピーは自然治癒に向かい始め、かゆみも見た目も徐々に改善し気持ちも楽になります。これら軟膏を活用し、ステロイドを最小限に抑えて良くします。
 鍵を握るのは、タクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏の長期外用です。悪くなったら、一時的にステロイドに戻します。タクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏を続けると、結構悪くても1~2年経つと一見アトピーと分からないくらい良くなることは珍しくありません。
 薬は、厚めに塗ります。塗っているのに効かないのは、薄く小さく塗っているからです。治療効果を得るには、成人の背中全体とお尻なら1回にチューブ1本5g、顔を除く全身なら1回にチューブ4本が必要です(厚生労働科学研究)全身に1本塗っても効かず、必要な半分程度しか塗られていないことが検証されています(J am acd Dermatol:56, 211, 2007)。なるべく弱いステロイドを、少ない量を薄く塗り、少し良くなったところで「ずっと塗っていると怖い」という噂を思い出して止めてしまう、中途半端な使い方では良くなりませんよくわかるアトピー性皮膚炎:公益財団法人日本アレルギー協会、P21-23。 

悪化時のおさえにステロイド ステロイドは、タクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏が塗れるようになるために使います。ポイントは、適切な強さのステロイドを厚めに塗って治しきることです。強さは、大人の体にはベリーストロング アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021、P2715)  、顔にはミディアム。幼児の体にはストロングが目安です。固くごわごわした重症な発疹をストロンゲストや、子供でもベリーストロングで良くすることもあります。ステロイドは何となく不安と感じている人は多く、大量、長期に使い続けると皮膚が薄くなったり毛細血管が浮き出る副作用が気になります。しかし、良くなったらタクロリムス等に変更しますので、強いステロイドを使っても実際に副作用が現れることは稀です。弱いステロイドをかゆい時だけ使い、タクロリムス(プロトピック®軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏に移行しないと、繰り返すかゆみが改善しないことがあります。
 関節部分は、皮膚を伸ばしてから薬を塗ります。指や肘頭、膝頭は曲げて、首の前の部分やあごの下は上を向いて、お尻の下は膝を上にあげて。全身を一遍に治すのは難しいので、場所を決めて1か所ずつ治す人もいます。例えば、膝の裏だけは毎日丁寧に塗って1~2週間かけて治したら、次は左腕を治すという具合に。塗る回数は、悪い時はできれば1日2回、良くなってきたら1日1回です。保湿剤と重ねて塗ってもいいですが、薄いと効きません。しっかり治したい部分は、混ぜ合わせていないステロイドを単独で、1日2回塗ると確実です。ステロイド外用薬と保湿外用薬の混合は広範囲に塗りやすいですが、安易な混合は安定性や吸収性の観点から推奨されていません アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021、P2732)

鍵を握るLife-changing drugタクロリムスを使いこなす 非ステロイド性免疫抑制薬のタクロリムスは、ステロイドを塗っても繰り返す皮膚炎を良くする特長があります。1993年に登場した際にはそれまでのアトピーの治療を一変させたため、アメリカで患者さんからLife-changing drugと呼ばれました。2歳から使われており、弱いステロイドを使うよりメリットがあります。
 タクロリムスはステロイドではないため、皮膚を薄くしたり毛細血管を拡張させることはなく長期に使えます。全身に塗れ、特に繰り返しやすいまぶたや首や肘の内側、膝裏などはタクロリムスの効果が現れやすい場所です。また、首や肘の内側、膝裏などの黒ずみは、治らない色素沈着誤解されていることがありますが、弱い皮膚炎が治り切っていない状態ですので,数ヶ月から1年以上かかりますがタクロリムスを使い続けると回りと同じ白い肌に戻っていきます。
 注意する点としては、ステロイドで良くしてから使わないと、熱くなったりかゆくなったりします。
 デルゴシチニブ(コレクチム®)も、タクロリムス同様ステロイドはない抗炎症剤です。デルゴシチニブの効果はタクロリムスよりわずかに弱いのですがBr J Dermatol 178: P424, 2018、使い始めのかゆみや火照りが無いのが特長です。

敏感肌は保湿剤で健常に補正 アトピーでは、正常に見えても保湿成分が少ない状態にあります。保湿成分は皮膚のバリア能を担っているため、外からの様々な刺激を受け湿疹やかゆみ起こしやすい敏感肌の状態にあります。このため、何も塗らないところには、保湿剤(ヘパリン類似物質・尿素)を塗ると敏感肌が補正されます。保湿剤に、湿疹やかゆみを良くする効果は基本的にありません。保湿剤でかゆみが速やかに良くなるとの言説は、ステロイドに対する不安から来る心理的効果と考えられています(Br J Dermatol:173、250、2015。保湿剤が合わなく赤くかゆくなるのは、治りきっていない皮膚炎に塗ったからです。

保湿剤とステロイドを塗る順番 保湿剤を全身に塗った上にステロイド等を重ねて塗り、たまに掻くこともない状態が維持されていれば今の塗り方で結構です。しかし、時々掻いているようなら保湿剤に重ねず、ステロイド等を厚目に塗った方が治療ははかどります。治り方を決めるのは、重ね塗りの順番ではなく、湿疹や時々掻くところを見定め、そこに病気を治すステロイドやタクロリムス(プロトピック®)、デルゴシチニブ(コレクチム®)を厚く塗ることです。重ね塗りの欠点は、ステロイドなどが薄く塗られてしまうことにあります。病気を治す薬の塗り方は、化粧品のそれとは異なります。

◆ 見ただけでは分からないかゆみ
 赤味もブツブツもないのにかゆい、炎症を伴わないかゆみもアトピー性皮膚炎の特徴です。その症状は様々で、汗ばんだり入浴後に背中がかゆくなることが多いのですが、全身のどこかに常時かゆみがあったり、毎日1~2回かゆみで目が覚めることもあり、かゆみのない状態を一瞬でも経験した覚えのない方もいらっしゃいます。
 ステロイドの塗り薬や飲み薬(抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬)の効果はないか、あっても飲んでいる時だけという場合は、タクロリムス軟膏の長期外用が有用です。規定のone finger tip unitの厚さ(日本のチューブから指先の関節一つ分出した軟膏を、手の平1枚分の広さに塗る)で毎日塗ると3か月から6か月程度である程度改善し、中には治ったとおっしゃる方もいらっしゃいます。この時塗る厚さが大切で、1本を全身に塗っても薄いので効果は期待できません。タクロリムス軟膏の成人の処方上限は1回5g1日2回までですので、広範囲の場合は一番かゆいところなど場所を決めて治します。これでも歯が立たない場合は、主治医にご相談ください。
 見ただけでは分からないかゆみを医師が知るには、かゆみがないか医師が尋ねるか、患者さんに表現してもらう必要があります。かゆみの表現については、以下のフレーズを参考に、かゆくなった時のことを思い出して自分なりに工夫してみてください。「発疹はきれいに治っても、背中にかゆみだけがいつもあり、処方されたマイザー軟膏を2週間で20g塗っても良くならない」、「週2~3回、夜かゆみで目が覚める」、「朝起きるとシーツに血がついており、背中に引っかき傷ができている」、「スポーツをすると(満員電車に乗ると)背中がかゆくなり不快になる」など。

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◆ 激しい発疹に効くシクロスポリン
 かゆみの激しい全身の皮疹を何とかしたい時には、炎症をピンポイントに抑える免疫調節剤の飲み薬、シクロスポリンが効果的です。3日~2週間程度試しに飲み、その効果をみて1~数週間続けます。これにより、ステロイドの塗る量を減らし、タクロリムスと保湿剤で更に良くするきっかけを作ります。飲んだり飲まなかったりも出来ます。 
 副作用として腎臓への負担と高血圧がありますが、40~50歳代までの方が数週間飲んで副作用が出ることはまずありません。また、菌への抵抗力は弱める方に働きますので、風邪気味だったり体調が悪い時には止めてください。このようなときに飲み続けると、突然38℃の熱が出たりします。
 シクロスポリンは、10年前(2008年)からアトピーに皮膚科医が使いこなしてきた薬です。3割負担の値段は、後発品70円/日~先発品360円/日です。

◆ 注射
・デュピルマブ(デュピクセント)
 激しいかゆみと発疹を速やかに良くする効果に加え、内臓への副作用の無いのが特長です。治療を受けるには、標準治療を適切に続けていることと、激しい発疹がある程度の範囲または顔や首にみられることが必要です。2週間ごとの1回の注射代は、3割負担で約1万7千円。詳しくはこちら
・ ネモリズマブ(ミチーガ) かゆみが激しく毎日夜起こされるが、発疹はそれほどひどくない状態に優れた効果を示します。治療を受けるには、今まで使った飲み薬と塗り薬の薬手帳などによる確認が必要です。4週ごとの1回の注射代は、3割負担で約3万5千円。13歳から。詳しくはこちら

◆ 薬を塗るのは大変、患者と医師の隔たり
 塗り薬の欠点は労力と時間がかかり、日常生活を送りながら続けるには負担が大きいことにあります。ある程度悪い症状には、飲み薬のシクロスポリンや注射のデュピルマブが有効ですが、塗り薬は欠かせません。塗り薬を入院し朝晩、医師と看護師が全身に塗ると短期間に良くなります。しかし、それと同じことを、仕事や学校から疲れて帰ってきて一人で毎日できるかというと難しい相談です。お子さんがアトピーなら、塗り薬の負担は親が背負うことになります。塗り薬の大変さを如実に語る逸話があります。注射をするとそれまで塗っていた薬がいらなくなる病気がありますが、それでよくなった人の口から漏れるのは長年の塗り薬から解放された喜びです。
 医師にとっても、塗り薬はストレスフルな方法です。塗る場所やその量、薬の使い分けを患者さんにやってもらうため、思い通りに治療がはかどらない欠点があるからです。患者さんの恣意が及ぶことのない注射や飲み薬、手術とは治り具合が違うのです。このため、塗り薬に対する患者さんの十人十色の考えに思いを寄せようと努めてはいますが、限られた診察時間の中で分かってさしあげられないことは少なくありません。『塗り薬には抵抗があり今のままでよい』という考えをお持ちの方がいらっしゃる一方で、『言われた通りやって良くなり、塗っていれば繰り返さないのでこれ以上説明しなくてよい』と言われることもあり、気づいてさしあげられないことは多いと思っています。
 お気づきのように、アトピーを良くしたいという患者の思いと、薬を塗ってもらいアトピーを良くしようとする医師の思いには隔たりがあります。

◆ 人それぞれ異なる治療への取り組み方|患者会のご紹介
 アトピーへの思いは、人それぞれです。その背景には、長年病院にかかっていても良くならない、医者から言われる標準治療が自分には合わない、多忙や仕事などのストレスが病気を悪化させる、薬の副作用が心配など様々あります。実際、病院に行っても解決しないこととして、集中力が低下し仕事・学業・家事に支障が出る、治療費がかかる、ストレスがたまりイライラする、見た目(外見)が気になる、完治せず不安、があります。このような疑問や問題は、患者会に参加すると考えを整理するきっかけが作れます。

患者会 認定NPO法人 日本アレルギー友の会

書籍 アトピー・かゆみ・じんましん 皮膚とアレルギーの名医が教える最高の治し方大全、佐伯秀久(日本医科大学皮膚科教授) 髙森建二(順天堂大学皮膚科特任教授) 中原剛士(九州大学皮膚科准教授) 小林美咲(小林皮膚科医院)、清益功浩(大阪府済生会中津病院小児科・免疫アレルギーセンター部長)、法研

    医師と患者 ふたつの視点で考えるアトピー性皮膚炎、古江増隆(九州大学教授)・認定NPO法人日本アレルギー友の会、かざひの文庫

【子供のアトピー】

 乳幼児から小学生 (ステロイドやタクロリムスを塗っても良くならず、副作用も心配です。良くなっても薬を塗る必要があるのは何故ですか。東京都保健医療局)​ 受傷当日のケガやヤケドなどを除き、診察には保護者の同伴が必要です。親権のない祖母や叔母/伯母などの同伴は、同居していても、他の医療機関はみてくれても診察できません。
 治療の基本はステロイドとタクロリムス、デルゴシチニブの塗り分けでありアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021, P2713:日本皮膚科学会、日本アレルギー学会)保湿ではありません。薄く塗っても良くなりません。薄く塗った方がよい薬でもありません。良くなっても悪くなった時の薬を絶やさぬよう、忙しくても再診できるかが鍵を握ります。薬が減り保湿剤で・・・
子供のアトピーは良くなりやすい 乾燥肌や乳児湿疹、アトピーの気があると言われたことがあり、その後たまに目の回りに手が行ったり、肘の内側や膝の裏側を掻いたり、あせもが出来やすいといった症状を繰り返す方はアトピー性皮膚炎のことがあります。この時期のアトピーも繰り返しますが、大人よりも良くなりやすい傾向があります。指先でなでてざらつくところに、つるっとなるまでステロイドを塗って良くします。
 治したのに繰り返し、たまに掻いている それをやっても繰り返したり、きれいなのにお風呂でお腹を掻くのがアトピーの困ったところです。たまに掻いていたり、くすみを良くするには、タクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏を使います。実際、25年前にタクロリムス(プロトピック)が使えるようになると、それまでのアトピーは随分と良くなりました。
 掻いたり繰り返すところには、良い時にも病気が残っています。きれいでも病気があるので、そのようなところにはタクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏を塗ります。薬を塗る繰り返しやすい場所は、人によって多少違いますが、まぶた、首回り、肩甲骨の間、肘の内側、膝裏などで、好発部位といいます。これら軟膏によって繰り返させず、症状の無い状態を維持するのが治療のポイントで、プロアクティブ療法と呼ばれていますアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:日本皮膚科学会、日本アレルギー学会)。”症状を現さない程度の種火のような病気”に対する治療で、保湿剤にこの効果はありません。
 まったく搔かなくなってもタクロリムス(プロトピック®)軟膏やデルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏は止めず、1日おきあるいは週に2回と塗る頻度を減らし、塗らない日は保湿剤を塗ります。一旦良くなっても再び悪くなりうる病気ですので、掻きだしたら1日2回塗ったりステロイドに戻します。保湿剤だけで半年全く掻かなかったら、中止してみます。
 かゆい時だけ塗っていても、良くなりにく病気です。これら軟膏でかゆみやくすみが良くなるには、年齢や症状の程度にもよりますが、数か月から1年以上かかります。
保湿剤と、タクロリムス(プロトピック®)やデルゴシチニブ(コレクチム®)の違いは? 保湿剤は、スキンケアに用います。タクロリムスなどは、炎症を鎮静する薬物療法に用い、正常に見える部分に潜む病気を改善します。咳をしていないときにも喘息の薬を飲み続けるように、長期に使います。
 保湿しているのに治りません 保湿剤に、かゆみや湿疹・皮膚炎を積極的に良くする効果はありません。保湿剤は、たまに掻くこともなく、くすみもない正常に見える部位のバリア機能補正に使いますアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021:日本皮膚科学会、日本アレルギー学会)。効果が無いにもかかわらず保湿でかゆみが速やかに良くなるとの言説は、ステロイドに対する不安から来る心理的効果と考えられています(Br J Dermatol:173、250、2015
塗っているのに治りません 良くならない原因の大半は不十分な使用量にあり(厚生労働省研究班)必要な半分程度しか塗られていないことが検証されています(J am acd Dermatol:56, 211, 2007)。適切な外用薬にもかかわらず良くならないのは、狭い範囲に薄く時々塗っているためで、たくさん塗ってはいけないといった見聞きした情報の誤信や根拠のない不安によると考えられています。ただし、薬塗りを長期に完璧に続けられる人はおらず、悪い原因無く悪化することのある病気ですので、ちゃんと塗っていても悪化することはあります。
子供が表現できないかゆみを把握しよう 何もぶつぶつはないしお子さんがかゆがりもしないから、薬を塗らなくても大丈夫とは限りません。言われてみると、パンツのラインをかいたり、襟やシャツのすそから手を入れてわきの下やわき腹を、ズボンの中に手を入れてお尻をかいている姿を見たことはありませんか。赤ちゃんはおむつの当たる腰を、幼児は肩甲骨の間をかくことが多く見受けられます。オチンチンをかく場合は、おねしょをするようなら、朝洗って保湿剤などを塗ると治ります。夜中にかゆがり、親が起こされ背中をさすってあげるような場合は医師にご相談ください。子供が、「背中を掻いてくれ」、「薬を塗ってくれ」とせがんだり、かゆみで背中を壁に擦りつけるしぐさは、大人なら生活の質や仕事に一定の支障をきたす痒くて辛い状態です。
 きれいな部分のかゆみは、搔いているところを見ないと医師にも分りませんので、「入浴後わき腹を掻く」、「寝る前に背中がかゆいと訴える」、「夜かゆみで泣いて起る」などと親御さんから教えていただいています。このようなかゆみは薬を毎日塗ってもすぐには治らず、数か月から1年以上かかて少しずつ良くなります。
 小学生に「かゆくない?」と尋ねると、「体育の時にかゆくなる」と答えることがあります。かゆみは、スポーツなど汗をかくことがきっかけとなることがあります。かゆみを自覚し、その部位や程度を人に伝わるように表現するのは、大人でもなかなかできるものではありません。
本当に日焼けでママより地黒なの? 「我が子の肌は地黒」と思ったら、耳の色と比べてみて下さい。耳より色が濃かったら、アトピーによる炎症の結果かもしれません。まぶたにクマが幼児にできることは極めてまれですし、首が他の部位よりも強く日に焼けるはずはありません(シミのできるところが、日焼けしやすい場所です)。額や首回り、わきの下、わき腹のくすみは、かゆくなくても病気が残っており、保湿剤では治りません。タクロリムスやデルゴシチニブを半年1年と長期に塗り続け、炎症の無い状態を維持すれば、徐々にもとの肌の色に戻ります。
アトピーと言われたことがありません 医師は、アトピー性皮膚炎と分かっていても、肌荒れだとか、乾燥肌、あせも、アトピーの気があるといった表現を好みます。10人に1人程度はアトピーのはずですが、アトピーと言われていると答える方はそれほど多くはありません。アトピーと伝えると、「アレルギー体質であり、使ってはいけないステロイドを止められなくなるので、薬に頼らず保湿で治す」、といった誤った見聞きした情報を患者家族が信じることがあるからです。そのような誤信は、医師が時間と労力をかけても払拭できず、アトピーだなんて余計なことを言わなければ良かったとなります。それを嫌って、医師はアトピーとはあえて言わず、当たり障りなく深入りしないでそっとしておくのです。アトピーと言われたことの無いその他の理由として、症状が軽い時にはアトピーかどうかはっきりしないことはありますし、アトピーと説明しても繰り返し説明しないので患者さんが忘れていることや、父親に説明したが母親に伝わっていないことやその逆もあります。
塗って良くしたのに、しばらくしたらボツボツを掻いています。完治しますか? 
アトピーは、はっきりした原因無く繰り返す病気です。ちゃんと塗って治しても、3~4か月良くても、再びかゆくなります。治療期間は一概には言えませんが、年単位とお考え下さい。いつになったらアトピーが治るかの予測は難しく、ケースバイケースですが、スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎よりも治りやすい傾向はあるとの印象を個人的にはもっています。完璧でなくても、途絶えることがあっても、続けることが大切です。継続は力なり。
あせもには、何を塗れば良いですか。 あせもとは正式な病名ではなく、汗をかきやすい部分にできた様々な皮膚病を指す、日常生活で使われる言葉です。あせもだとして皮膚科を受診する疾患には、アトピーを含む湿疹・皮膚炎のほかに汗の管の炎症である紅色汗疹や、毛穴の炎症である毛包炎など、塗る薬の異なる多彩な皮膚病が含まれます。このため、あせもがどの疾患を指しているのか、病名をはっきりさせることが大切です。アトピ-にできるあせもと保護者の方が呼ぶもののほとんどは、診察するとアトピ-性皮膚炎の悪化です。
学校の提出物 学校への提出物は、お持ち下されば記入しています。ただし、食事制限を受けている方は、食事制限を指導している医師に記入をお願いしてください。

  保湿剤の上に薬を重ね塗りしたので良いか・塗る順番

たくさん薬を出してください 1回処方量上限の目安は、適正使用の観点から、薬の種類にもよりますがおおむね1か月と定められています。多忙で受診できずお困りでも、医師は国と保険者から信任を受け健康保険法などに従う義務があり、不適切とみなされる処方はできません。誰にでも起こるのですが、どうすることもできない不条理なことが襲っても、治療が途絶えて悪化しても、続けることが良くなる近道です。
 老朽化した日本の医療制度が抱える課題は、2~30年前から指摘され続け1回処方量もその一つです。外国人に言わせると、0~3割の自己負担率でどこの病院でもかかれる日本は夢のような国だそうですので、不便であっても保険のルールに従い、医療制度が変わるのを待つしかないのではないでしょうか。
 
小児アトピーのパンフレット
 ぜんそく悪化予防のための小児アトピー性皮膚炎ハンドブック|国立成育医療センターアレルギー科 大矢幸弘 監修
 
赤ちゃんの洗い方(看護師監修)
石鹸を使った顔の洗い方(動画) 幼児

書籍 子どものアレルギー アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・ぜんそく 大矢幸弘(国立成育医療センター アレルギーセンター長)・五十嵐隆、文芸春秋

    アトピー性皮膚炎をしっかり治す本 大矢幸弘(国立成育医療研究センター アレルギーセンター長)、法研

    子どものアトピー性皮膚炎 正しい治療法 江藤隆史 (元東京逓信病院 副院長)、講談社

 
◆ 小学校高学年から中高校生
 受験やクラブで忙しくなり、親が言っても薬を塗らない塗らせなくなります。近づきすぎず、離れすぎずの適度な距離感を保ち、完璧でなくても良いので中断することなく治療を継続するようサポートします。親が誘っても病院に行きたがらなかったり、放課後の塾やクラブが影響して受診率が下がる時期ですので、気づぬうちに悪化することのないよう折に触れ良く見てあげるよう心がけます。
 運動部にはいると、かきっぱなしの汗で悪化することがあります。日本の学校はシャワーで汗を流すことが殆どできず、朝家を出ると夜遅く塾から帰ってくるまで、そのままのことは少なくありません。絞ったタオルで首回りを拭いたり、肘や膝裏などを洗い流すのも効果的です。
 学校でかゆみを感じながら過ごしてい子供は少なくありません。子供に尋ねると、かゆくなるのは授業中教室が暑くなっときや、運動で汗をかく体育や休み時間のとき、また暑くなくても授業中にかゆくなると答えることもあります。かゆみは、困っていると訴えなくても、日常生活や学業、仕事に負担となることが知られています。かゆくなる場所を尋ね、そこにタクロリムス軟膏やデルゴシチニブ軟膏を塗って治します。
 一旦良くなっても、男子は大学入学後の下宿や、男女問わず就職後の長時間勤務による生活の乱れとストレスが原因で、悪化することが経験されます。また、女子は育児や家事を始めると、手が荒れ易くなります。学業や仕事への影響を最小限にくい止めるためにも、親元を離れる前のこの時期に治療習慣の体得が望まれます。

 一般向けアトピー性皮膚炎に関する情報|九州大学皮膚科
 日本アレルギー協会 よくわかるアトピー性皮膚炎
 
Q 血液検査で反応すると出た、卵やハウスダストが原因ですか。血液検査(IgE、TARC)は受けるべきですか。
A 卵やハウスダストなどに対するIgEの検査が反応すると出たからといって、食べてはいけない、あるいはそれを取り除けば治るとすぐには言えません。なぜなら、検査は実際に皮膚で起きている反応を再現していないからです。血液検査では卵やハウスダストなどと血液を混ぜて調べますが、調べるハウスダストや卵の白身は実際には血管の中を流れてはいません。消化されるなどして、血液の成分と反応するのです。このため、卵やハウスダストなどが検査で反応しても、皮膚炎やかゆみの原因には直接関わらないことがほとんどです※。しかし、お子さんの中には、卵などを食べた数分後に皮膚が赤くなって、かきむしるといった食物アレルギーを思わせる症状がみられることがあります。その場合は、制限すべき食物が何で、どのように制限するか慎重に検討します。食べた数分から30分の間に症状が出なければ、血液検査が陽性の食物を制限する必要はありません。
 このように卵やダニなど対するIgE検査が言えることには限りがありますが、それを知ったうえで検査することはご自分の病状を把握するうえで大切です。検査をするときには反応が出ることの多そうな項目を選び、お子さんなら食物を中心に、成人ではダニなどの環境抗原を中心に調べます。気になる、調べておきたい項目をおっしゃっていただければ追加できます。費用は、3割負担の方なら健康保険で1項目330円で調べることができます。多くの方は総IgEが上昇していますので、一緒に調べると参考になります。また、その時々のアトピーの悪化具合を調べるにはTARCと呼ばれる検査項目が有用で、3割の方で582円の負担で調べられます。アトピーが良くなるとTARCの数値もそれに応じて下がりますので、病状の目安となり治療をサポートしてくれます。
 当院では中学生以上の方を対象に血液検査をしていますので、ご希望の方はご遠慮なく医師にお申し付けください。小学生以下のお子さんの血管は細く、私には採血が難しいのでご遠慮いただいております。
 いずれも、糖尿病などとは異なり、アトピーの治療のために調べなけらばならない検査ではありません。

※ アレルギー検査の解釈は、アトピーと花粉症など他の疾患とでは異なります。

よくわかる食物アレルギー(発行:日本アレルギー協会) P15にアレルギー検査について詳しく書かれています

Q 薬はいつまで塗るのですか。
A 花粉症や喘息と同じように治りにくい病気です。いつなったら塗りやめられるかの予測はケースバイケースで困難ですが、年単位とお考え下さい。花粉症よりは治りやすいと、個人的には感じています。
 時々かゆくなるところには、プロトピック®(タクロリムス)あるいはコレクチム、モイゼルトを毎日塗ります。まったくかゆくなくなっても、止めずに間隔を1日おき週に2回とあけ、塗らない日は保湿剤を塗ります。再び湿疹が出たら、ステロイドに戻します。3か月程調子が良くても、季節の変わり目や仕事のストレスなどで悪化することがありますので、悪くなったらすぐに塗れるようステロイドを手元に置いておきます。保湿剤だけで半年間かゆみが出なければ、一旦止めてみて下さい。

Q 季節の変わり目に悪くなります。東京に大学、就職、転勤で転居したら悪化しました。
A アトピーは、季節の変わり目に繰り返し悪くなることがあります。冬の乾燥や夏の汗で悪くなり、過ごしやすい春と秋に落ち着いていても、東京では6月に蒸し暑くなったり11月に乾燥してくると悪化します。このように、3~4か月調子が良くてもぶり返すことが多いため、大丈夫だと思っても薬が減ったら念のため病院に行って補充します。そして、汗をかいたら拭いたりシャワー等で流し、荒れやすい敏感肌には夏でも保湿剤を塗るスキンケアで対処します。
 季節による影響は地域により異なり、夏、寝苦しい東京で悪化しても高原や北日本ではそれほど悪くならず、冬に湿度の高い日本海側では乾燥する太平洋側ほど悪くはなりません。気候のほかにストレスも影響し、睡眠不足や不規則な生活、家事をやってもらえた親元を離れての下宿や就職、単身赴任などで悪くなります。このため、上京すると悪化することがあります。
 東京の夏は高温多湿で冬は異常乾燥注意報が出され、終電に近づくほど電車が混むなどストレスも多く、仕事や学業に励むに当たり十分なスキンケアが望まれます。

Q 薬は何回、いつ塗ったら良いですか。
A 入浴後ないし寝る前に1回、悪いところは朝も2回塗るのが基本です。しかし、これにこだわる必要はありません。実際、朝は忙しいので気づいたところだけ、お風呂上りも疲れて忙しくて結局1週間、塗ろうと思ったが殆ど塗れなかった、ということはよくあります。休みの日のお昼に、冬なら暖房を入れた部屋で、20分くらいかけてのんびりテレビの前で丁寧に塗るのも良くするコツです。以前かゆくなったったところは今は何ともなくてもタクロリムス、かゆみだけ出るところもタクロリムス、ザラザラかゆいところはステロイド、その他のところは全身に保湿剤。

Q べとべとした塗り薬が合いません。
A さらっとしたクリームやローションタイプのステロイドや保湿剤もありますので、塗り心地を試されて下さい。これらのタイプは薄く伸びますが、できれば伸ばさない方が効きます。頭皮にはローションが使い易く、シールタイプのステロイドは、治りにくい指や踵のあかぎれなどに好んで使われます。タクロリムスは軟膏しかありません。

Q 「夜中に眠りながらかいている」と家族に言われます。朝起きると爪の間に血が付いて、パジャマが血で汚れています。夜かゆがって泣く子供に起こされます。かゆみ過敏とは何ですか。かゆみ止めの飲み薬は効きますか。
A 同じように感じても、アトピーには2種類のかゆみがあります。一つは、赤くブツブツした皮膚炎に伴うかゆみで、虫刺されやかぶれと同じようにステロイドの塗り薬が効きます。もう一つは、何もないのにかゆい「かゆみ過敏」の状態で、例え強いステロイドを塗っても効かずタクロリムスで治します。かゆみ過敏は、皮膚の表面まで神経が伸びたことが原因です。タクロリムスが効きますが即効性は無く、塗った翌日に良くならなくても1か月もすると楽になったことが分かります。お子さんに夜起こされることも、減ったり無くなります。
 かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬)の効果は人それぞれですので、効いていると感じるなら飲んだ方が良いと思います。逆に、効いた感じがしなければ、飲まなくても良いと思います。詳しい研究によると、飲まないより飲んだ方が、飲んだり飲まなかったより毎日飲んだ方がかゆみに対して良いことが分かっていますが、その差はわずかです。かゆみ止めの飲み薬の説明に抗アレルギー薬とあるとアレルギー体質が根本から治るというイメージを与えますが、ヒスタミンの作用を阻害する以上のはっきりした臨床効果は明らかにされていません。抗アレルギー薬とは、眠くなりにくい抗ヒスタミン薬に対する日本市場における呼び方です。
 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の飲み薬に、かゆみが楽になり引っかきが減る効果はあっても、皮膚炎(湿疹)そのものを良くする効果はありません。

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Q 保湿を続けているのに、カサカサやかゆみが治りません。
A 乾燥が原因の軽い症状に、保湿剤が効くことがあります。しかし、2~3日塗っても治らなければ、それ以上続けても良くなりません。悪化させることにもなりかねませんので、タクロリムスやステロイドを使った皮膚炎の治療に一旦変え、良くなったら再び保湿剤に戻します。保湿剤を塗る目的は、一見正常に見える刺激に反応しやすい敏感肌を、健康な肌に補正することです。そのため、保湿剤はかさついた部分ではなく、何も出来ていないところに広めに塗ります。
 保湿剤を塗っても、一旦良くしたカサカサが戻ったり、むずがゆさが治らないことがあります。目に見えない潜在する病気が原因ですので、何もないところにタクロリムスを塗り時間をかけて治します。

Q 汗をかくと悪化します。
A 汗をかくことは良いことで、肌にうるおいを与えアトピーによく働きますので、プールや運動などを制限する必要はありません。しかし、かいた汗を放置するとかゆい皮疹が出来やすいので、かいた汗は拭き、手を洗う時には肘の内側まで洗い、汗で汚れた服は着替え、帰宅後はシャワーで汗を流すように心がけます。

Q 夏も保湿剤は塗った方が良いですか。
A 汗をかいてしっとりしていても、アトピーの皮膚のバリア能は傷ついており敏感肌であることには変わりありませんので、夏も保湿剤を塗ることは大切です。さらっとしたローションタイプでもクリームタイプでも、皮膚のバリア能補正に差はありません。

Q 石鹸は使った方がいいですか。どのような石鹸を選んだら良いですか。
A アトピーは皮膚の汚れで悪化しますので、石鹸を使って汚れを落とすことは肌に良く働きます。しかし、石鹸を使いすぎると皮膚のしっとり感が失われてしまい、逆にアトピーを悪化させてしまいます。
このため、首回りや肘や膝の裏側などは石鹸を普通に使い、腕の外側やすね等の汚れにくい部位は石鹸を使ってさっと洗います。石鹸の種類は、普段ご家庭で使っているもので結構で、治療のために特別な石鹸を用意する必要はありません。
 アトピーに良いとか敏感肌用と称して売られている石鹸は、汚れは取るが皮膚の保湿成分は取り除かない特長をもち、使用感も優れています。しかし、通常の石鹸に比べて高価なため、お好みでお選びいただく性格のものと私は考えています。このような代表的な製品として、下記のようなものがあります。

ビオレu泡(花王) キュレル(花王) コラージュ(持田ヘルスケア) NOV セバメド(ロート製薬) アトピコ(大島椿) ドゥーエ(資生堂) アクセーヌ ラロッシュポゼ

Q 入浴剤を使いたいのですが、どのような商品を選んだらよいですか。
A 保湿性のある下記のようなものが良く、硫黄が入っているものは肌をかさつかせます。
コラージュDメディパワー保湿入浴剤(持田ヘルスケア) ミノン薬用保湿入浴剤(第一三共ヘルスケア)

Q ステロイドで良くしても、また元に戻ります。
A 一見良くしても繰り返すのは、目に見えない皮膚炎が治り切らずに残っているからです。アトピーでなければほっといても自然に治ってしまうような皮膚炎が、良くなっても火種の様に消えずに残っているのです。そこへもってきて、アトピーは一見普通に見えても、全身、敏感肌です。ですから、かきっぱなしの汗や乾燥等により、容易に皮膚炎が悪化して元に戻ってしまうのです。このぶり返しを防ぐには、ステロイドで良くしても残っている皮膚炎を、タクロリムスで抑え再び勢いづかせないことです。
 タクロリムスを塗る場所はまぶた、首回り、背中の上、肘の内側、膝の裏などです。つまり、今は調子が良くても過去に繰り返した所や、何も出来ていなくてもむずがゆくなったり癖で手が行く所なら、全身どこにでも塗れます。塗る頻度は2日に1回でも、週に1回でもかゆみやカサカサ等が出なければ結構です。もしもぶり返したら塗り方が足りなかったので、次からはタクロリムスを塗る範囲や回数を増やします。
 同時に、保湿剤をそれ以外の何でも無いところにも塗って、全身の敏感肌を補正します。保湿剤はカサカサにではなく、何でもないところに塗ります。ステロイドは、タクロリムスを1日2回塗っても治らなかったら一時的に使う、おさえの薬として手元に控えておきます。
 このようにアトピーを良くする鍵は、ステロイドで良くした後のタクロリムスの使い方にあります。

Q 薬は混ぜて容器に入ったのと、チューブとどちらがよいですか。
A 薬は本来はそのまま使えるようにできています。組み合わせによっては成分が変化することもあるので、混ぜたり薄めたりすることは好ましくなく、薄めても副作用は減りません(厚生労働省研究班、アトピー性皮膚炎のかゆみの解明と治療の標準化に関する研究)。日本のチューブは小さなものしか認められず、広範に塗りにくいという使い勝手の悪さがあります。そのため、混ぜれば容器に入れてもらえるため、混ぜて処方する実情があります。このように、薬の効果だけを考えるのならチューブから出して塗った方が治療ははかどりますが、塗らないチューブを持っていても良くならないので、私は患者さんが希望されれば混ぜて容器に入れた処方もしています。

Q ステロイドは何日塗れますか。
A ステロイドは、強いので何日以上は塗っていけないという治療薬ではありません。速やかに治る強さのステロイドを選び、べとべと気味に朝晩塗るのが基本です。ごわごわ感のあるしつこい湿疹は触って硬い感じがなくなるまで塗り続けることが必要で、子供でも2週間くらい強いステロイドを塗らないと消えないこともあります(厚生労働省研究班、アトピー性皮膚炎のかゆみの解明と治療の標準化に関する研究)。
 このようにして良くなったら繰り返さないようにタクロリムスに変、必要最小限のステロイドで良い状態を保つようにします。

Q 目の回りは、眼科用の薬ですか。まぶたの乾燥、赤み、くすみ、かゆみ、しわ、腫れ。
A まぶたも、タクロリムス軟膏で治します。刺激があるようなら、ステロイドやデルゴシチニブ軟膏で良くしてから、タクロリムス軟膏に変えます。これらの薬が、通常の使い方で目に影響することはありません。眼科用の軟膏は弱いステロイドで、皮膚が薄くなるなどの副作用を弱いながらも持っているためタクロリムスを使った方がメリットがあります。

Q 唇の乾燥にリップを使っています。唇にホクロがあります。
A 唇の乾燥や繰り返す口角炎もアトピーです。タクロリムスや、刺激があればステロイドで良くしてからタクロリムスに変えて良い状態を維持して下さい。このような炎症の結果ホクロのような色素沈着を唇にきたすことが知られており、保険適応はありませんがQスイッチルビーレーザーなどが有効です。

Q 乳首のジクジクが治らず、切れて痛みます。
A ほかの部位と同様にステロイドを塗って良くした後、タクロリムスや保湿剤などを使います。男性はこれでうまくいきますが、女性が良くならないときはこちら

Q 首回りや肘の、色素沈着が消えません。
A アトピーでみられる黒ずみの原因は、治りきっていない皮膚炎です。そのため、タクロリムスを十分な量塗り続けると、何カ月もかかりますが徐々に本来の肌の色に戻っていきます。塗る量の目安は、首なら1日1回、チューブ1本が1~2週間で無くなる量です。色素沈着について、詳しくはこちら

Q タクロリムスを塗ったら、熱くヒリヒリしてかゆみも増して使えませんでした。子供がかゆがって夜中に泣き、親も起こされ眠れませんでした。
A 多少でもザラザラ、カサカサしているところでは、タクロリムスを塗るとかゆみや火照りが激しく塗れないことがあります。塗るタイミングが早かったからで、ステロイドでもっと良くしてから、今度は10円玉大の狭い範囲から毎日少しずつ塗り広げてみてください。
 ステロイドで良くしてつるっとさせたはずでも、長年ステロイドを塗り続けてきたところでは、タクロリムスの激しい刺激がいつまでも続くことがあります。このようなときは、ステロイドではない2020年から16歳以上に使えるようになったデルゴシチニブが有効です。デルゴシチニブの効果はタクロリムスとほぼ同じですが、使い始めのかゆみや火照りが無いのが特長です。デルゴシチニブをしばらく塗り、刺激が出なくなったらタクロリムスに戻して下さい。
 2歳のお子さんが初めてタクロリムスを塗るときは、つるっとしたきれいな肌なのに、お風呂に入ると泣いたり、夜かゆみで起こされることがあります。今までステロイドしか塗ってこなかったため、正常に見えても潜在的に皮膚が荒れているためです。少しずつ狭い範囲から塗るなどして、タクロリムスを塗っても刺激の出ない健常な皮膚に戻す必要があります。
 タクロリムスは薬の粒(分子量)が大きく、正常な皮膚からは吸収されません。かゆみや火照りなどの刺激がでるようなら、見た目がきれいでも穴が開いたよう状態で正常ではありません。

Q ステロイドを塗ると、茶色いシミが残り消えなくなりますか。日に当たってはいけない薬ですか。
A ステロイドに肌の色を茶色くさせる働きはなく、正常な皮膚に塗っても茶色くなることはありません。ところが、アトピーが完全に治っておらず、かゆみを感じない程度の弱い炎症が残っていると、首や肘の内側などの茶色味が何年経っても消えないように見えます。そのような茶色味はステロイドのせいのように思えるかもしれませんが、治りきっていないアトピーによる変化ですのでタクロリムスを塗ると半年から1年ぐらいかけて落ちていきます。
 ステロイドには、日に当たって肌を茶色くさせる作用もありません。
 厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」一般向けQ&Aも、ご参照ください。

Q エステ、美容皮膚科で「施術を受けてよいか、アトピーがあるのでシミにならないか」、皮膚科に行って聞いてくるよう言われました。
A 美容サービスの購入は当事者間の契約であり、保険診療は関われないため、医師の指示であってもあいにくお答えいたしかねます。政府の通知を参考にされるなどして、患者さんご自身でご判断下さい。
美容医療サービスの消費者トラブル サービスを受ける前に確認したいポイント|総務省
確認してください!美容医療を受ける前にもう一度|厚生労働省
美容医療サービスに関する相談|国民生活センター


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