Q原因は何ですか?治りますか?
A アトピーはいくつもの要素がそろって初めて発症し、いずれは自然と治る病気です。しかし、良くしても繰り返すのが問題です。実際、3か月くらい調子が良くても、その後悪化することは少なくありません。なぜなら、「調子がよい」状態には、目に見えないアトピーがまだ残っているからです。これを良くするにはプロトピックと保湿剤を使って、むずがゆさも黒ずみもないしっとりした肌にします。症状が出てから薬を塗るのではなく、症状に現れる前の火種をあらかじめ消しておくのです。調子が良くても病院に行って薬を補充し、いつもの薬を絶やさないことも大切です。
発症に関わる要素に、肌の保湿成分の遺伝子に特徴のあることがあげられます。しかし、そのような特徴を持つ人全てがアトピーになるわけではありません。アトピーなのに遺伝子に特徴の無い人もいますので、体質だけが原因とは言い切れません。アトピーはこのような遺伝的背景のほかに、環境因子と呼ばれる気候やその時代の社会の衛生状態、さらには精神的ストレスなど、いくつもの要素が様々に組み合わさって発症すると考えられています。
Q塗っても繰り返し、治りませんでした。
A 良くなっても、タクロリムス(プロトピックⓇ) を 出たところに広めに繰り返さなくなるまで塗り続けます。 成人が顔に1日1回塗ると、1か月で3本無くなりますので、担当医とタクロリムス(プロトピックⓇ) の塗る量や回数が少くないか確認してください。 繰り返さなくなったら1日おきに減らし、塗らない日は保湿剤を塗ります。
繰り返すのは、目に見えない皮膚炎が治っていないからです。保湿剤だけで半年間かゆみが出なければ、一旦止めてみて下さい。
Q季節の変わり目に悪くなります。東京に大学、就職、転勤で転居したら悪化しました。
A アトピーは、季節の変わり目に繰り返し悪くなることがあります。冬の乾燥や夏の汗で悪くなり、過ごしやすい春と秋に落ち着いていても、東京では6月に蒸し暑くなったり11月に乾燥してくると悪化します。このように、3~4か月調子が良くてもぶり返すことが多いため、大丈夫だと思っても薬が減ったら念のため病院に行って補充します。そして、汗をかいたら拭いたりシャワー等で流し、荒れやすい敏感肌には夏でも保湿剤を塗るスキンケアで対処します。
季節による影響は地域により異なり、夏、寝苦しい東京で悪化しても高原や北日本ではそれほど悪くならず、冬に湿度の高い日本海側では乾燥する太平洋側ほど悪くはなりません。気候のほかにストレスも影響し、睡眠不足や不規則な生活、家事をやってもらえた親元を離れての下宿や就職、単身赴任などで悪くなります。このため、上京すると悪化することがあります。
東京の夏は高温多湿で冬は異常乾燥注意報が出され、終電に近づくほど電車が混むなどストレスも多く、仕事や学業に励むに当たり十分なスキンケアが望まれます。
Q薬は何回、いつ塗ったら良いですか。
A 入浴後ないし寝る前に1回、悪いところは朝も2回塗るのが基本です。しかし、これにこだわる必要はありません。実際、朝は忙しいので気づいたところだけ、お風呂上りも疲れて忙しくて結局1週間、塗ろうと思ったが殆ど塗れなかった、ということはよくあります。休みの日のお昼に、冬なら暖房を入れた部屋で、20分くらいかけてのんびりテレビの前で丁寧に塗るのも良くするコツです。以前かゆくなったったところは今は何ともなくてもプロトピック、かゆみだけ出るところもプロトピック、ザラザラかゆいところはステロイド、その他のところは全身に保湿剤。
Q「夜中に眠りながらかいている」と家族に言われます。朝起きると爪の間に血が付いて、パジャマが血で汚れています。夜かゆがって泣く子供に起こされます。かゆみ過敏とは何ですか。かゆみ止めの飲み薬は効きますか。
A 同じように感じても、アトピーには2種類のかゆみがあります。一つは、赤くブツブツした皮膚炎に伴うかゆみで、虫刺されやかぶれと同じようにステロイドの塗り薬が効きます。もう一つは、何もないのにかゆい「かゆみ過敏」の状態で、例え強いステロイドを塗っても効かずプロトピックで治します。かゆみ過敏は、皮膚の表面まで神経が伸びたことが原因です。プロトピックが効きますが即効性は無く、塗った翌日に良くならなくても1か月もすると楽になったことが分かります。お子さんに夜起こされることも、減ったり無くなります。
かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬)の効果は人それぞれですので、効いていると感じるなら飲んだ方が良いと思います。逆に、効いた感じがしなければ、飲まなくても良いと思います。詳しい研究によると、飲まないより飲んだ方が、飲んだり飲まなかったより毎日飲んだ方が良いことが分かっていますが、その差はわずかです。かゆみ止めの飲み薬の説明に抗アレルギー薬とあるとアレルギー体質が根本から治るというイメージを与えますが、ヒスタミンの作用を阻害する以上のはっきりした臨床効果は明らかにされていません。抗アレルギー薬とは、眠くなりにくい抗ヒスタミン薬に対する日本市場における呼び方です。
Q仕事が忙しくなると/試験が近づくと悪化して、かゆみでどうにもならなくなります。
A アトピーはストレスで悪化しますが、そういう時に限って薬が塗れず病院にもいけません。そのようなことのないよう、状態が良くても定期的に病院に行き、悪くなった時用の薬を処方してもらっておくことも大切です。悪くなる場所は決まっていますので、今までかゆみが出た場所を思い出して、状態が良いので大丈夫だと思ってもタクロリムスや保湿剤を塗ると悪化しにくくなります。週末は、普段より時間をかけて薬を塗るのも効果的です。
Q保湿を続けているのに、カサカサやかゆみが治りません。
A 乾燥が原因の軽い症状に、保湿剤が効くことがあります。しかし、2~3日塗っても治らなければ、それ以上続けても良くなりません。悪化させることにもなりかねませんので、タクロリムス(プロトピックⓇ)やステロイドを使った皮膚炎の治療に一旦変え、良くなったら再び保湿剤に戻します。保湿剤を塗る目的は、一見正常に見える刺激に反応しやすい敏感肌を、健康な肌に補正することです。そのため、保湿剤はかさついた部分ではなく、何も出来ていないところに広めに塗ります。
Q汗をかくと悪化します。
A 汗をかくことは良いことで、肌にうるおいを与えアトピーによく働きますので、プールや運動などを制限する必要はありません。しかし、かいた汗を放置するとかゆい皮疹が出来やすいので、かいた汗は拭き、手を洗う時には肘の内側まで洗い、汗で汚れた服は着替え、帰宅後はシャワーで汗を流すように心がけます。
Q夏でも保湿剤は塗った方が良いですか。
A 汗をかいてしっとりしていても、アトピーの皮膚のバリア能は傷ついており敏感肌であることには変わりありませんので、夏も保湿剤を塗ることは大切です。さらっとしたローションタイプでも、そちらの方が肌の調子が良いようならクリームタイプを選んでも、両方を場所により使い分けても結構です。
Q石鹸は使った方がいいですか。どのような石鹸を選んだら良いですか。
A アトピーは皮膚の汚れで悪化しますので、石鹸を使って汚れを落とすことは肌に良く働きます。しかし、石鹸を使いすぎると皮膚のしっとり感が失われてしまい、逆にアトピーを悪化させてしまいます。
このため、首回りや肘や膝の裏側などは石鹸を普通に使い、腕の外側やすね等の汚れにくい部位は石鹸を使ってさっと洗います。石鹸の種類は、普段ご家庭で使っているもので結構で、治療のために特別な石鹸を用意する必要はありません。
アトピーに良いとか敏感肌用と称して売られている石鹸は、汚れは取るが皮膚の保湿成分は取り除かない特長をもち、使用感も優れています。しかし、通常の石鹸に比べて高価なため、お好みでお選びいただく性格のものと私は考えています。このような代表的な製品として、下記のようなものがあります。
Qステロイド以外の塗り薬がありますか。
A 皮膚炎に効くもう一つの薬に、タクロリムス(プロトピックⓇ)があります。ステロイドを長期に塗ったときに出る副作用である、皮膚を薄くさせたり血管を拡張させることはありません。激しい発疹を治す力はステロイドほどありませんので、ステロイドである程度良くなったらタクロリムス(プロトピックⓇ)に変えると、弱いステロイドに変えるより更に良くなります。
Qステロイドで良くしても、また元に戻ります。
A 一見良くしても繰り返すのは、目に見えない皮膚炎が治り切らずに残っているからです。アトピーでなければほっといても自然に治ってしまうような皮膚炎が、良くなっても火種の様に消えずに残っているのです。そこへもってきて、アトピーは一見普通に見えても、全身、敏感肌です。ですから、かきっぱなしの汗や乾燥等により、容易に皮膚炎が悪化して元に戻ってしまうのです。このぶり返しを防ぐには、ステロイドで良くしても残っている皮膚炎を、プロトピックで抑え再び勢いづかせないことです。
プロトピックを塗る場所はまぶた、首回り、背中の上、肘の内側、膝の裏などです。つまり、今は調子が良くても過去に繰り返した所や、何も出来ていなくてもむずがゆくなったり癖で手が行く所なら、全身どこにでも塗れます。塗る頻度は2日に1回でも、週に1回でもかゆみやカサカサ等が出なければ結構です。もしもぶり返したら塗り方が足りなかったので、次からはプロトピックを塗る範囲や回数を増やします。
同時に、保湿剤をそれ以外の何でも無いところにも塗って、全身の敏感肌を補正します。保湿剤はカサカサにではなく、何でもないところに塗ります。ステロイドは、プロトピックを1日2回塗っても治らなかったら一時的に使う、おさえの薬として手元に控えておきます。
このようにアトピーを良くする鍵は、ステロイドで良くした後のプロトピックの使い方にあります。
Q何気なく目に手をやることがありますが、家族が聞いてもかゆいとは答えません。気にしなくてよいですか。
A 赤くかゆそうな発疹が無く一見正常でも、アトピーのためにむずがゆくなったり髪の毛でチクチクすることがあります。顔に手がいくのはそのためですが、本人に尋ねても自覚していないことが殆どです。原因は目に見えない皮膚炎やかゆみ過敏ですので、保湿剤で改善されない場合はプロトピックで治します。目がかゆいといっても、正確にはかゆいのは皮膚である『まぶた』です。
Q目に薬は塗れますか。
A まぶたのかゆみや腫れは、タクロリムス(プロトピック®)で治せます。まぶたの皮膚は薄いので、薬の吸収が良く治りやすい場所です。ステロイドは漫然と塗り続けると眼圧を上げる副作用のでることがありますが、タクロリムス(プロトピック®)にそのような副作用はありません。タクロリムス(プロトピック®)を塗って熱くなったりかゆくなるようなら、少しずつ狭い範囲から塗って慣らしたり、1~2日ステロイドを塗って良くしてからタクロリムス(プロトピック®)に変えます。そして、無意識に手がいかなくなるまで、塗り続けます。かゆいまぶたを激しく搔いたり叩くと、目を傷めるので良くして下さい。
Q乳首のジクジクが治らず、切れて痛みます。
A ほかの部位と同様にステロイドを塗って良くした後、プロトピックや保湿剤などを使います。男性はこれでうまくいきますが、女性が良くならない場合は、次のように工夫します。まず、乳頭が擦れにくくなるよう下着は2サイズ大きくします。そして、厚めのガーゼなどの中央を丸くくり抜き、空いた穴に乳首が埋まるよう当てます。洗剤のキャップで乳首を覆い、成功した人もいます。
Q首回りや肘の、色素沈着が消えません。
A アトピーでみられる黒ずみの原因は、治りきっていない皮膚炎です。そのため、タクロリムス(プロトピック)を十分な量塗り続けると、何カ月もかかりますが徐々に本来の肌の色に戻っていきます。塗る量の目安は、首なら1日1回、チューブ1本が1~2週間で無くなる量です。
Qタクロリムス(プロトピックⓇ)を塗ったら、熱くヒリヒリしてかゆみも増して使えませんでした。子供がかゆがって夜中に泣き、親も起こされ眠れませんでした。
A プロトピックⓇを塗ると火照ったりかゆくなり、特にお子さんの肌は敏感なため夜中に泣いたり、お風呂のお湯に触れると嫌がり塗れないことがあります。このような場合にはステロイドや保湿剤をしばらく塗ってから、再びプロトピックⓇを塗ってみて下さい。綺麗な部分を選んで、最初は指先ほどの狭い範囲から毎日少しずつ塗り広げていくのが良いと思います。
このような火照りやかゆみは、唐辛子と似た作用をプロトピックⓇが神経に及ぼすためです。多少の刺激なら薬を塗り続けると無くなるのは、目に見えない皮膚炎をプロトピックⓇが治すからです。プロトピックⓇは薬の粒(分子量)が大きいため、正常の皮膚からは吸収されず刺激は起きません。しかし、アトピーの肌は綺麗に見えても目に見えない皮膚炎があるため薬が吸収され火照りやかゆみを引き起こします。きれいなところに塗って熱くなったりかゆくなったら、そこは正常ではないということです。
刺激が激しかったり、いつまでも続く場合は先発品に変えてみるのも一法です。
プロトピックⓇの刺激を避けるためには、いきなり広範囲に塗らず狭い範囲から塗り始めるのがポイントです。
Qステロイドを塗ると、茶色いシミが残り消えなくなりますか。日に当たってはいけない薬ですか。
A ステロイドに肌の色を茶色くさせる働きはなく、正常な皮膚に塗っても茶色くなることはありません。ところが、アトピーが完全に治っておらず、かゆみを感じない程度の弱い炎症が残っていると、首や肘の内側などの茶色味が何年経っても消えないように見えます。そのような茶色味はステロイドのせいのように思えるかもしれませんが、治りきっていないアトピーによる変化ですのでプロトピックを塗ると半年から1年ぐらいかけて落ちていきます。
ステロイドには、日に当たって肌を茶色くさせる作用もありません。 厚生労働省研究班「アトピー性皮膚炎の既存治療法のEBMによる評価と有用な治療法の普及」一般向けQ&Aも、ご参照ください。
Qステロイドを塗り続けると効かなくなりますか。
A ベリーストロングに分類されるステロイドを月に100g、半年以上塗り続けると、最初はスッと治っていたかゆみが、塗っても最初程良くならず悪化する間隔も短くなります。これが、ステロイドが効かなくなると俗に言われる現象で、タキフィラキシーと専門用語で呼ばれています。誤解のある例えですが、皮膚がアル中になったようなものです。効かなくなったら、ステロイドをしばらく塗らないでおくと効くようになりますが、むやみやたらにそんなことをしたら更に悪化して危険です。無理をせず徐々に塗れるところからタクロリムスに変えるとか、シクロスポリンを短期間飲むとかしてステロイド断ちを試みます。慎重に気長にやれば、だいたいうまくいき、アトピーも良くなります。
Qプロトピックには発癌性があるのですか。日に当たっても大丈夫ですか。
A ネズミにプロトピックを塗った実験で、リンパ腫という癌の発生率が増えることが分かっています。
しかし、この事実よりプロトピックを塗ると癌になりやすくなるとは考えられていません。なぜなら、使ったネズミは実験用に改良されているため何もしなくてもリンパ腫になる傾向があり、塗った薬の量は人に換算すると非常に多いという条件での話しだからです。飛躍のある例えですが、「塩分の取り過ぎで脳卒中になるが、みそ汁は飲んでも大丈夫か。」と考えるようなものだと私は思います。さらに、プロトピックを使った170万人中11名にリンパ腫を患われた方がいらっしゃいますが、その頻度は普通の人がリンパ腫になるのより低いため、原因はプロトピックではなく自然になったと考えられています。長期使用による安全性についても、国内の5年間使用については問題はみられず、10年間使用のデータがこれから出されます。
動物実験の結果はこのように解釈され、プロトピックはアメリカ、EU、アジア等多くの国々で安全性と効果に対する審査を経て使われています。