目次
Q 保湿剤を塗ると肌に良いのですか?
Q 生後1か月なのに頭の黄色いフケがとれません
Q 1か月健診の時にあった顔や体のあちこちのカサカサや湿疹が、いつまでも繰り返します。
Q 保湿剤を全身に塗り、その後ステロイドを重ね塗りしたので良いですか。
Q 血液検査で、食べてはいけないものが分かると聞きました。
Q 妊娠中の食べ物が原因?
Q 食べたら口の回りが赤くなりました。
Q 病院で時々塗り薬をもらいますが、乾燥肌ですか乳児湿疹ですか、それともアトピーですか。いつになったら、アトピーかどうかわかりますか。
Q あせもですか。
◆ おむつかぶれ
◆ 炊飯器の湯気による火傷
◆ 虫刺され
◆ アザ できもの
Q 保湿剤を塗ると肌に良いのですか?
A 専門家は現段階で、アトピー予防のために、生まれたときからの保湿を一律に勧めていません。少し前までは勧めていたのですが、保湿でアトピーを予防できるか世界中で臨床試験をしたところ、予防できる結果だけではなく、予防できない結果も後からでてきのたので、結論をだすにはもっと詳しい検討が必要だということになりました。
ただし、アトピーと診断されたり、湿疹を繰り返しやすい子に保湿剤を塗ることが大切なことに変わりありません。以前より、アトピーでもおむつの中だけは生まれた時と同じきれいな肌のままであることはよく知られていました。このとき、保湿剤は一見正常な肌に塗ります。ごく軽い湿疹・皮膚炎は保湿剤で治ることがありますが、塗っても良くなる様子がはっきりしないければ、適宜ステロイドを使います。食べ物で荒れやすく、1日何度も拭く口の回りにはワセリンが好んで使われています。
Q 生後1か月なのに頭の黄色いフケがとれません
A 生後3か月までは頭や顔の脂が多く、フケやニキビになり易い時期です。頭の黄色いフケは単なる乾燥ではなく、皮膚の新陳代謝が活発なこの時期特有の湿疹、皮膚炎の一種です。オリーブオイルやワセリン等でふやかしても取れにくい場合は、薬を塗って治します。
頭のほかに汚れやすいところに、耳の後ろ、首回り、わきの下があります。特に、首回りは指を奥まで入れて、わきの下は皮膚のヒダの間まで石鹸を使って洗うと良いと小児皮膚科の大御所の先生がお話しており、その通りにやると確かにきれいになります。生後3か月を過ぎると、これらの部位の汚れやすさは無くなります。
Q 1か月健診の時にあった顔や体のあちこちのカサカサや湿疹が、いつまでも繰り返します。
A 赤ちゃんの治りにくい湿疹は成長とともに良くなり、4か月健診時に繰り返していた多くが、1歳半から2歳で良くなっていたとの調査があります。
顔、肘の内側や手首、膝裏や足首などに繰り返すあせも
(汗をかきやすい部位にできた皮疹を指す俗語で、あせもという病名は無く様々な疾患が含まれます。診察すると、湿疹や毛穴の炎症のことが多く見受けられます)や湿疹・皮膚炎は、軽ければワセリンや保湿剤、亜鉛華軟膏で治り、塗っていれば悪くなりません。しかし、それでも悪化する場合は、肌の健康のために個々の皮疹に合ったステロイドを使うことを考えても良いと思います。それまで何か月かあったかゆみや皮疹は、残念ながら1回だけの受診で完治するとは限らないため、折に触れ再診し皮膚の状態を評価することも大切です。
治療のポイントは、皮疹ごとに良くなるに十分な強さのステロイドを弱過ぎず強過ぎず選び、べとべと厚く塗ること、良くなっても保湿剤やワセリンを塗り続けることです。ステロイドで良くしても3日後には元に戻る頬の赤いガサガサには、ガサガサの部分に1日2回のステロイドと日に5~6回のワセリン、つまりワセリンでコーティングしてからミルクやご飯を食べ、食後に顔を拭いたらまたワセリンを塗ります。このように、必要最小限度のステロイドと何回も塗るワセリンで悪化を阻止し、成長と共に良くなるのをサポートできます。
ステロイドは、部位や年齢による皮膚の厚さや、湿疹・皮膚炎の程度によりその強さを使い分け、どの皮疹に何を塗るかがポイントです。赤くても表面がつるっとした点状の盛り上がらない発疹は、ステロイドを塗らなくても自然と治る傾向があります。一方、いつまでも治らない足首や手首のしわに沿ったカサカサや、気がつきにくい耳の裏のカサカサは、かゆくなくても皮膚炎ですのでステロイドを塗り、良くなってからも繰り返さないように保湿剤を続けます。指しゃぶりでタコになったのは、かゆくて歯で掻いている湿疹です。ステロイドを指に塗って治しますが、その指をしゃぶっても体内に入るステロイドの量は極めて少ないため全身への影響はありません。
良くなっても保湿剤を塗り続けることは、良い状態を保つだけでなく、ステロイドの使用量を減らす効果もありますので大切です。繰り返す口の回りはワセリンが、汚れを寄せつけないので良く使われます。おむつの中に湿疹・皮膚炎ができにくいのは、そこがしっとりしているからです。おむつの中と似た湿疹・皮膚炎のできにくい状態を、全身の広い範囲に保湿剤を毎日たっぷり塗ります。夏でも保湿剤は湿疹・皮膚炎を起こさないために必要ですので、保湿剤を体の広い範囲に塗ります。ワセリンは皮膚の表面に油の幕を作り角質をふやかすだけですが、保湿剤は角質の中に浸透し保湿能を正常に補正するためより効果的と考えられています。どちらでも、使い心地の良いお好きなものを選んでください。保湿剤は一見正常な肌に塗ります。カサつきは程度が軽ければに保湿剤を塗って良くなることはありますが、塗って赤くなったらそこは乾燥ではなくステロイドで治すべき軽い皮膚炎であり、保湿剤が肌に合わなかった訳ではありません。
Q 保湿剤を全身に塗り、その後ステロイドを重ね塗りしたので良いですか。
A 良い状態が保たれているのでしたら、保湿剤の上にステロイドを塗ってください。そうしているのに良くならないようなら、触ってザラザラしたところステロイドを、つるっとしているところには保湿剤を塗り分けてみてください。どちらも正しいのですが、薬はベトベト塗らないと効果は得られませんので、しっかりと治したいときは塗り分けた方が治療がはかどります。
Q 血液検査で、食べてはいけないものが分かると聞きました。
A 卵や牛乳、小麦などを血を採って調べられますが、
反応ありと出たものを食べると必ず症状が出て、食べてはいけないものがはっきりするわけではありません。なぜなら、血と卵を試験管の中で混ぜて調べる血液検査は、卵が消化され血液に入り皮膚で反応する実際に体の中で起こっている反応を再現してはいないからです。食べ物アレルギーをはっきりさせ正しく対処するためには、食べた後何が起こったかよくお話を伺うことが何より大切です。血液検査は参考になる大切な検査ですが、検査結果だけで食べ物を制限するのは慎重であるべきと専門家は指摘しています。検査の意義については、よくわかる食物アレルギー(発行:日本アレルギー協会)のP15に詳しく書かれていますのでご参照ください。
アレルギーを疑う症状としては、卵などを食べて数分から十数分の間に口のまわりから首にかけて赤いかゆみを生じ、30分くらいの間に治ってしまうのが典型です。このような症状がでたら、医師の指導のもと食べ物を一時的に制限することがありますが、ほぼ全てに近い方が年齢と共に消化機能が発達し食べられるようになります。
あいにく当院では、血管が細く採血の難しい、小学生以下の血液検査を行っていません。
子供の食物アレルギー 離乳食を遅らせない・食物除去をしすぎない(NHK)
Q 妊娠中の食べ物が原因?
A 妊娠中や授乳中のお母さんの食べ物が、お子さんに影響を与えることはないとされています。それは、妊娠中や授乳中に食べても食べなくても、アレルギーの発症に差がなかったからです。それでは、なぜ初めて食べる離乳食でアレルギー症状が出るのかというと、ホコリに混ざっている卵の成分が荒れた肌に付いて反応すると考えられています。きれいに掃除をしている家でも、布団などのチリを調べると卵などの成分が見つかるんだそうです。
⇒アレルギーになりやすいものは妊娠中や授乳中は避けた方がいいでしょうか? (小児のアレルギー疾患
保健指導の手引き:P 10、厚生労働科学特別研究事業)
Q 食べたら口の回りが赤くなりました。
A ほのかに赤くなるだけで、首にかけて激しくかきむしるなどの重い症状がなければ、アレルギーではなく一過性の刺激のことがほとんどです。血液検査は大切ですが、それだけでは制限すべきアレルギーかどうかをはっきりさせる決め手にはなりません。診察のおおまかな流れとしては、小児のアレルギーに精通した医師の判断のもと必要に応じて参考となる検査が考慮され、少量より食べられることを確認します。根拠なく食べ物を制限すると体はかえって反応しやすくなり、食べ物に対するアレルギーの耐性(なりにくさ)は消化管で獲得されるという知見に基づき対処します。
Q 病院で時々塗り薬をもらいますが、乾燥肌ですか乳児湿疹ですか、それともアトピーですか。いつになったら、アトピーかどうかわかりますか。
A かゆみや湿疹を繰り返し、乳児湿疹と言われるものの中にはアトピーも含まれます。アトピーかどうかは、かゆみや肘の内側や膝の裏などに繰り返す湿疹などから判断しますが、このような典型的な症状が続かないとアトピーかどうかはっきりしないことがあります。血液検査だけではアトピーかどうかを知る手掛かりにならず、卵に反応ありと出てもアトピーかどうかは占えません。いずれであっても、そのままにしておくのは肌の健康上好ましくありませんので塗り薬で良くします。
塗り薬を医師の診察のもと適切に続けていると、繰り返すかゆみやアトピーのほとんどは、成人と異なり徐々に良くなることが明らかにされています。自然に良くなるには、保湿剤とステロイドの使い分けが大切です。アトピーと診断されればステロイドのほかに、コレクチム®(デルゴシチニブ)軟膏を赤ちゃんにも、2才からはプロトピック®(タクロリムス)軟膏も役立てます。このとき、調子が良くても手持ちの薬を絶やさないようにして下さい。
繰り返すかゆみをアトピーと名付けられるかどうかはっきりさせることよりも、地道に薬を塗るほうが大切です。アトピーについて、詳しくはこちら。
Q あせもですか。
A あせもとは正式な病名ではなく、汗をかきやすい部分にできた様々な皮膚病を指す、日常生活で使われる言葉です。あせもだとして皮膚科を受診する疾患には、アトピーを含む湿疹・皮膚炎のほかに汗の管の炎症である紅色汗疹や、毛穴の炎症である毛包炎など、塗る薬の異なる多彩な皮膚病が含まれます。このため、あせもがどの疾患を指しているのか、病名をはっきりさせることが大切です。肘の内側や膝の裏に繰り返すあせもと表現される症状は、乳児湿疹の一つであるアトピーのことがあります。
◆ おむつかぶれ
便や尿の刺激で肌が赤くなった状態です。おむつを交換できなかったり、便が緩いときに起こりやすいです。この様な時は、拭いたり流した後にワセリンなどべとべとしたものを塗り、尿や便が直接肌に付きにくくして予防します。軽いおむつかぶれは自然と治ることが多いですが、治りにくい時は亜鉛華軟膏を厚めに塗るのが効果的です(アメリカ皮膚科学会の動画に塗り方が出ています)。下痢が続き赤くジクジクになって痛々しい時は、一時的にステロイドを塗ると楽になりますが、同時にステロイドによって便の中にいるカンジダと呼ばれるカビが付きやすくなることに注意します。カンジダがいるかどうかは顕微鏡検査でその場で分かり、カビがいても塗り薬で速やかに治ります。
◆ 虫刺され
同じ虫に刺されても子供と大人では体の反応が異なるため、特に小さい子ではしこりとなって腫れることがありますが蚊アレルギーではありません。塗り薬は固くなったしこりの中まで届きませんので、塗ってすぐに引かなくても1週間程度で治ります。顔に刺されてまぶたが大きく腫れることがあっても、目への影響はありません。
◆ 炊飯器の湯気による火傷
何にでも興味を示すこの時期、大人が予想しない火傷の原因の一つに炊飯器があります。炊飯器から立ち上がる湯気を、小さいお子さんが「何だろう」と思って手をかざすと、深い火傷になることがあります。皮膚がまだ薄いことに加え、熱いとは思わずに触れ、熱いと分かっても俊敏に手を離せないことが影響します。炊飯器は、小さいお子さんの手の届かないところに置くようご配慮ください
◆ アザ できもの
生まれた時や1か月健診の時などに説明を受けた後は、その後の経過を確認するため時期をみて皮膚科を受診しておくのも一法です。成長に従い蒙古斑のように消えてしまうものも、後から出てきても再び消えてしまうもの、消えないものなど今後の経過も様々です。